贈与による不動産名義変更を自分でするために必要書類・費用・その他の手続き

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土地建物をタダ(無料・無償)で譲渡する・譲ってもらう贈与

『土地 譲渡 手続き』などで検索された方へ売買も『譲渡』です

不動産を譲る・貰うとき、相手からお金を貰うことも貰わないこともあります。
法律的には『譲渡』ということばは特定の契約と関係なく、有償の取引かどうかも区別していません。
売買で不動産を譲るときも贈与で不動産を譲るときも、『譲渡』といっています。

このため、『譲渡』という検索語を使うと探したい情報が見つかりにくくなります。

不動産を譲渡する相手からお金を貰うなら『売買』、無償で譲るなら『贈与』、離婚する夫婦間では『財産分与』など、相手との関係を考えてさらに検索してください。

他のウェブサイトには不動産その他の資産を他人に移転する契約について、『贈与』と『譲渡』を比較してその長所や特徴を論じるものがあります。そうしたウェブサイトでは『譲渡』を譲渡所得が発生する有償の譲渡(売買など)と解釈しているようです。

以下では現に生きている人たちの間で、タダ(無償)で土地や家を譲渡する・譲ってもらう場合を考えます。契約や登記の手続きは相手が親などの親族でも他人でも同じですが、贈与税の税額と対策に違いがあります。

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無償での不動産譲渡はたいてい『贈与』ですが、例外も多々あります

他人から不動産の贈与(譲渡)を受けることも当然できます

不動産をタダで貰えることになった・名義を変えたいという相談では、まず『贈与』を登記原因とする所有権移転登記を行うことを考えます。相手は家族でも他人でも同じです。
この相談ではなるべく贈与税が低くなる手続き・契約形態を探ることが必須です。

登記申請書や添付書類の書式は、『所有権移転登記 贈与』で検索できます。

住宅などを世間相場より安く売ってもらうような場合で、いちおう売買に伴うお金の動きがあるときは登記原因は贈与になりません。所有権移転登記の手続きとしては売買が登記原因になり、一方で低額譲渡にともなう贈与税の課税に注意する必要があります。

他人ではない誰かから不動産をタダで譲ってもらうことになったとき、次の二つの状況で『贈与』という登記原因で登記の手続きをしようとする人がいます。これは致命的間違いを発生させる可能性があり、慎重な検討が必要です。

1.離婚の前後で、夫婦間で不動産を譲渡する

実は財産分与をしたいのだ、ということが多いです。登記原因は財産分与になります。
贈与税の発生で手続きが制約されにくいため、まず財産分与を検討します。

迅速に不動産を譲り受け名義変更を行うことを優先したい事情があれば、離婚前の夫婦間でも贈与の登記を計画することはあります。離婚から2年経過して財産分与を請求できなくなった場合も、贈与・売買など他人とできる契約を経て不動産の名義を変えることを検討します。

2.亡くなった人の遺産を、相続人が分ける

これは遺産分割だと考えてよいことが多いですが、遺産分割のやり直しをするときには様々な方法を考えます。
遺産分割が済んでいない場合の登記原因は、相続になります。
遺産分割がいったん済んでいて、再度の遺産分割ができない(相続人全員の協力が得られない)場合、贈与・交換・共有物分割(一部の相続人だけが共有する物件がある場合)などで目的の相続人に不動産を譲渡することを考えます。

相続人とは別の人に遺産を譲ってあげたいという相談もあります。
この場合はいったん相続人の一人に不動産を相続してもらい相続登記を経てから、低額での売買または無償での贈与で目的の人に不動産を譲渡することが一般的です。

このほか、結果として無償で他人に譲渡することになる場合

上記のほか、不動産を共有する人の一人から他の共有者に無償で不動産を譲ることになる考え方として共有持分を『放棄』することが手続き上は可能です。

これは不動産の持分を持つ共有者の意思表示により不動産の持分を手放し他の共有者に取得させるもので、共有持分移転の不動産登記も可能です。
持分の放棄により、不動産の持分は無償で他の共有者に移転する、つまりタダでほかの人の共有持分に加わります。この点では贈与と似ていますが、相手との契約が不要である点が決定的な違いです。この場合も登記の費用は必要ですし、贈与税は発生します。

単純な贈与でない可能性を探る場合

主に贈与税対策として考えます。譲渡する不動産の価値の全額に応じた贈与税を課税されてしまうより、不動産の譲渡を受ける人が出費や負担をすることで出費などの分を差し引いた不動産譲渡の計画にできないかを探るものです。

不動産譲渡を受ける人の検討事項
  • 少しでもお金を出せないか(売買)
  • お金以外の財産を引き替えに渡せないか(交換)
  • 相手以外の人に財産交付・なんらかの義務を負うことはできないか(負担付贈与)
  • 不動産の持ち主に貸金その他の債権をもっていないか(代物弁済)

これらは「なるべくタダで財産を貰うことは避けたい」という発想ですが、贈与してもらう不動産の価値が贈与税の基礎控除額(1人年間110万円)を下回っていればこうしたことは考えずに済みます。
言い換えると、贈与税の課税さえなければ不動産譲渡計画の自由度はきわめて高くなり、制約条件は手続きの手間と登記の費用だけになります。

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流れとチェックリスト贈与による所有権移転登記

贈与による不動産名義変更の流れ知りあいからの不動産無償譲渡

1.譲り受けてどうするか、の確認
ファイナンシャルプランナーからの質問です

たまたまタダで家を貰えることになったから貰っておく、要らなくなったら売ってしまえばカネになるはずだ。そう思っている人はいませんか?

土地や家の保有には維持費(主に固定資産税)がかかります。
古いマンションなど、売りたくても売れないで滞留する不良資産もあります。
そうした不動産をタダでも手放したい人も出てきています。

その不動産の贈与を受けたらどうするかを、次のような点から考えてみてください。

  1. 自分やその家族、営んでいる事業で(長期に・短期に)使う
  2. 他の人に貸して賃料を得る
  3. 担保に入れてお金を借りる
  4. 売却してお金に換える
  5. 他の人に相続・譲渡させないために自分が譲り受けておく
  6. 上記いずれでもないが、機会があるので取得する(多少の面倒や出費は受け入れる)

譲り受ける不動産が上記の目的に沿っているか、よく調べることが重要です。
特に4.5.について、固定資産税が高かったり転売可能性の低い不動産を漫然と取得することは決しておすすめできません。現在の所有者が自ら不動産を売却し、その代金を贈与してもらうほうがよほどシンプルかもしれません。

2.緊急性はないか、の確認
司法書士からの質問です

不動産の今の持ち主について、病気の悪化や死亡・海外への転居・親族の大反対など、放置すると贈与の交渉を困難にする要素がないか確認してください。
もし該当しそうな事情があるなら、多少の費用が増えても不動産の名義変更を優先させる必要があるかもしれません。そうでなければ贈与に代わる選択肢もゆっくり考えながら話を進めていいでしょう。

相続対策で生前贈与を検討する場合、作成がかんたんな自筆での遺言を先に作っておいてもらう(贈与がなされないまま死亡しても、遺言にしたがって相続または遺贈が受けられるようにする)こともあります。


3A.見たことがない物件・よく知らない人が所有する不動産を譲渡される場合

普段見ていない投資用マンションや、遠い親類から土地を譲り受ける場合です。
譲渡される不動産やその持ち主のことをよく知らない場合、『売買による不動産名義変更の流れ』とおなじようにして不動産の現況と所有者をまず確認します。

『その物』をもらっていいか・もらってどうするか物件と使用目的の確認

不動産の実際の状態を確認することは、無償で譲ってもらう場合でも重要な作業です。
その土地や建物の現状が、取得後にあなたが想定している使い方・目的に合いそうか考えてみてください。

マンションでは物件の現況のほか、管理体制や修繕積立金の状況も確認するのは売買のときと同じです。

持ち主本人からの提案か持ち主の確認

土地や家を譲ると言ってきたのは、その不動産の持主本人でしょうか?
持ち主が高齢で、家族が財産を整理しているときしばしば問題になります。

不動産の登記情報を取得して、登記上の所有者を確認することができます。
建物が未登記のときは契約時までに対応を考えます。いったん持ち主名義で登記してもらい、その後に贈与の登記をするのが理想ですが状況により、未登記のまま譲渡してもらうこともあります。

不動産の維持費の確認

どんな目的で取得するものであれ、不動産を保有すれば固定資産税がかかります。
毎年発生する費用ですので今の持ち主から税額を聞いておきましょう。

マンションであれば管理費や修繕積立金も、不動産を保有するかぎり発生し続ける維持費になります。ほかにこうした固定費がないか、持ち主から聞き取っておいてください。

3B.自宅を親子で贈与するなど、知っている物件を譲ってもらう場合

不動産の持ち主も譲渡後の使用目的もはっきりしている場合です。
土地や家の現状は当然承知していると想定します。
贈与を受けて「自分が住む」ことが目的でない場合はその目的に沿った物件であるか検討しておく必要があります。

家族のあいだで「誰かが不正に不動産を名義変更させた」場合も登記原因が贈与になっている可能性があります。他の家族等が手続きや契約の有効性を調べたい場合、登記申請した法務局で申請書類を閲覧するところから調査をはじめます。


4.贈与をうけた場合にかかる税金の見込額と対応

不動産の贈与、というより譲渡全般で選択肢をもっとも制約するのは贈与税の発生です。
基礎控除を使う・相続時精算課税を利用する・粛々と納税する等、案件によって可能な対応はさまざまあります。税務署や税理士会の無料相談を積極的に使って、どのような対応ができるか確認してください。

親戚や他人から贈与を受ける(贈与税額を減らす特例がほぼ使えない)場合、数年かけて持分を譲ってもらう・贈与を受ける側の人数を増やして共有する等の対策を考えます。

実費はいくらかかるのか

贈与の登記にかかる費用として登録免許税だけ調べてはいませんか?
贈与を受けた側では、不動産名義変更後に支払う不動産取得税も無視できません。

それを避けるために、賃貸借など別の方法を検討することもあります。

5.契約条件はどうするか

家の鍵・必要書類の引き渡し時期は当然として、ほかにも譲渡する方・譲ってもらう方が協議すれば決められることはたくさんあります。

インターネットで法律を調べるより、相手の意向をよく聞いたほうが話が早いかもしれません。
基本的には今の持ち主の責任を減らす方向で契約条件を定めることが多いのですが、どちらを有利にするのも皆さん方次第です。
お互いが納得して贈与契約書にすればいいのです。

贈与以外の手段で名義を変えたり、計画を停止して再検討することも多々あります。
無償なのだからいま譲ってもらわないと損だ、とは限りません。

6.必要書類の作成・準備・登記申請

上記の作業で、不動産の名義を変える時期や条件があきらかになってきます。
贈与契約書や登記申請書など、必要書類を探すのはこの段階からでかまいません。

贈与による所有権移転登記の手続きは、契約書の作成や物件の引き渡し(住宅なら、入居)の後になってもかまいません。不動産を手放す持ち主の印鑑証明書に有効期限があることだけ注意して、所有権移転登記の申請準備をしてください。

7.不動産を譲り受けた人の納税

所有権移転登記後に、不動産を譲り受けた人には不動産取得税納付の連絡がきます。
基礎控除額以下だった場合を除き、贈与の翌年には贈与税の申告と納税が必要です。

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チェックリスト贈与登記の本人申請・不動産を譲ってもらう側

贈与契約のまえに 1目に見える状況について

  • 贈与される不動産の現地現物、備品の機能は確認したか
  • 土地の境界は明らかか。隣の人との争いはないか
  • 敷地・建物内に残っている動産は贈与された人が処分してよいか
  • 登記されていない別の建物や増築部分はないか。ある場合、今の持ち主のものか
  • または、多少の問題があってもタダなら貰ってしまうと開き直れるか

契約のまえに 2贈与そのものの是非について

  • 今の持ち主に、病気・死亡・身内の反対など手続きを急ぐ状況はないか
  • 贈与税額は試算したか・税額軽減の特例を受けられそうか
  • 不動産取得税額は試算したか
  • 登記にかかる登録免許税は試算したか
  • 毎年の固定資産税額は確認したか
  • 譲り受けた後の目的に沿う、生前贈与以外の手続きは検討したか
  • 贈与税が発生しそうな場合、贈与を受ける側が今の持ち主のために、なにかしてあげた・してあげることはないか(代物弁済や低額での売買・負担付贈与に該当しないか)

契約のまえに 3契約条件と持ち主の負担の調整について

  • 贈与の年の固定資産税はどちらが負担するか
  • 土地の場合、実際の面積が登記と異なっていた場合はどうするか
  • 建物の場合、登記されていない別の建物や増改築部分は譲渡してもらえるのか
  • マンションの場合、修繕積立金に滞納はないか。費用負担を要する修繕計画はないか
  • 現在の登記の状況はどうなっているか。抵当権や賃借権など不利な登記はされていないか
  • 土地の場合、公図や地積測量図を確認したか。公図上は、道路に接続している土地か
  • 土地の実測面積が登記情報記載の面積と一致しない可能性を承知しているか
  • または、多少の問題があってもタダなら持ち主の責任を問わない・未払いの費用や負担や法律上の問題があっても引き継ぐ、ということにしてしまえるか

逆に贈与後の一定期間は譲り受けた人の側に解除権を留保する(贈与をなかったことにして、不動産を元の持ち主に返す)契約も可能ですが、課税をめぐって問題が残ります。

  • 持ち主が持っている登記済証(権利書)や登記識別情報記載の受付番号・受付日は、不動産の登記情報に記載の受付番号・日付と一致しているか。
  • 持ち主が複数回に分けて不動産の持分を取得していた場合、その回数ぶんの登記済証などを確認したか。
  • 最新の不動産の登記情報に記載されている持ち主の住所氏名は、印鑑証明書に記載のものと一致しているか。

不一致の場合は所有権登記名義人住所(氏名)変更登記の手続きが必要です

贈与契約のときに

  • 必要書類・物件の鍵の引き渡しはいつどのように行うか
  • 贈与契約書に上記の取り決めは盛り込まれているか
  • 持ち主が押した実印の印影は鮮明か。印鑑証明書と一致しているか。
  • 持ち主が書いた住所氏名は印鑑証明書と一致しているか
  • 登記に必要な全ての必要書類が揃っているか
  • 持ち主全員と直接会って物件を譲渡する意思があることを確認したか

意思表示ができない人と契約することはできないので、寝たきりの人からは贈与を受けることもできません

登記申請書提出のまえに登記申請書と添付書類について

  • 共有者がいる・共有持分を貰うのに登記の目的を「所有権移転」としていないか
  • 登記原因の日付は、贈与契約書または登記原因証明情報の記載と一致しているか
  • 権利者の記載は住民票記載の住所氏名と一致しているか
  • 共有持分を譲渡される場合、権利者の持分を記載したか
  • 義務者の記載は印鑑証明書記載の住所氏名と一致しているか
  • 登記申請の管轄法務局を、法務局のウェブサイトで確認したか
  • 課税価格は1000円未満を切り捨てたか
  • 登録免許税額は100円未満を切り捨てたか
  • 登記申請書に記載の不動産の表示は、各不動産の登記情報と比べて間違いないか
  • 登記申請書2ページ目に収入印紙を貼る場合、1ページ目と2ページ目に契印をしたか
  • 登記申請書・委任状・登記原因証明情報(または契約書)に記載の権利者・義務者の住所氏名は全て一致しているか。誤字はないか。
  • 登記申請書・委任状・登記原因証明情報(または契約書)に記載の不動産の表示は全て一致しているか
  • 委任状・登記原因証明情報(または契約書)には今の持ち主全員の実印が押してあるか
  • 委任状の日付は、登記原因の日付と同じか後の日付になっているか
  • 持ち主全員の印鑑証明書は、登記申請の時点で発行日から3ヶ月以内のものであるか
  • 住民票・評価証明書・贈与契約書は原本還付を受けるか。その場合、原本証明をおこなったか。

気になることがありましたら、当事務所の登記相談をご利用ください。

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参考文献

この他の参考文献

不動産登記の本人申請に関するもの

贈与など、相続対策に関するもの

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