相続による不動産名義変更の必要書類相続登記を自分で

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相続登記の手続きに必要な書類

相続登記では不動産の持ち主はすでに死亡していますので、これまで述べた添付書類の多くは不要になります。必要書類にはつぎのものが挙げられます。

一般的な必要書類相続登記では、権利書は不要です

  • 相続の事実を証明する書類
  • 遺言で相続分を決めてあるならば、遺言書
  • 遺産分割協議をして相続分を決めたならば、遺産分割協議書と印鑑証明書
  • 不動産を相続する人の住民票
  • 不動産の固定資産税の評価証明書

住民票と評価証明書以外は、売買や贈与での所有権移転登記と違う書類が必要です。被相続人の印鑑証明書やその不動産の権利証は必要ありません。

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相続の事実を証明する書類法定相続人の確定

 まずはじめに、次の書類を取得します。亡くなられた方のことを通常は被相続人と言いますが、(生きている)法定相続人と紛らわしいのでここでは「死亡者」と呼ぶことにします。

  • 死亡者の、死亡に伴って除籍になった事項が記載されている戸籍謄本または除籍の謄本

死亡者に配偶者や未婚の子がいて存命の場合には戸籍謄本の発行を受けます。
そこには、生きている配偶者や子の記載と、死亡者については除籍された記載があるはずです。
妻を残して夫が死亡した場合には、夫婦の戸籍に収容されたまま夫だけが除籍になっていますので、「戸籍謄本」の発行を受けることになります。
結婚後、子供がいない、または子供が全員結婚したあとで配偶者もすでにいない場合には、「除籍謄本」の発行を受けます。

 死亡者の戸籍をさかのぼるために最初に入手するものが戸籍謄本になるか除籍の謄本になるかは死亡者の状況によって違います。特に郵送で請求する場合に手数料額を知る必要があるため、相続登記で自分が最初に手に入れる必要書類が戸籍謄本になるのか除籍謄本になるのかは見当をつけておきましょう。

 戸籍・除籍にかかわらず、戸籍謄本類の請求をするには『本籍』と『筆頭者(戸主)』が明らかになっていることが必要です。戦後の日本の戸籍は本籍地ごとに『筆頭者とその配偶者・子』をまとめるかたちで編制されているためです。

戸籍および除籍の謄本は、『その時点で本籍があった市区町村役場』で発行されます。
生まれた時は九州にいたが東京で結婚したという死亡者については、最寄りの役場で戸籍を収集しきれるわけではありません。まず直近の戸籍謄本等を取得後、その記載をみて直前の除籍謄本等にさかのぼっていく、これを死亡者が生まれた時点の戸籍まで行う、という作業が必要です。

金融機関も預金解約の際に、被相続人(死亡者)の口座を解約等するにあたって相続登記に添付する戸籍謄本類と同じ必要書類を提出するよう求めてきています。

ですので金融機関の審査をパスしただけの戸籍謄本類が集まっていれば相続登記の必要書類にもなっています。管轄の役場に対して『死亡した親の相続登記や預金解約のために、出生時までさかのぼってその役場で取れるだけの除籍謄本類がほしい』というような漠然とした請求をかけても(多少時間はかかるにしても)その役場で出せるだけの適切な書類を発行してくれるからです。

 少し横着なやりかたですが、遠隔地の役場から昔の除籍謄本類を手に入れたいなら、その役場で請求したい本籍と筆頭者(戸主)、実際に出生までの除籍謄本類を収集したい人の氏名をあらかじめ伝えて、取得できる書類と手数料合計額を教えてもらってから郵便為替・本人確認書類・申請書等を送付する、という方法でもかまいません。
役場によってはこれを望ましいとするところもあります。
発行手数料として送付する定額小為替に過不足が生じないようにという見地からのようです。

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死亡時の住民票の除票

 可能であれば、死亡者について死亡時の住所と本籍が記載された住民票の除票も入手します。

住民票の除票は死亡時から5年以内であれば、死亡時の住民登録地の役場で発行されます。

この書類が添付できない場合、死亡者名義の不動産登記に記載されている住所について、その住所地の役場(戸籍謄本等の発行部署)で不在籍証明書および不在住証明書を発行してもらう必要があります。そうしないと、登記情報に載っている死亡者の住所とその人の死亡の情報を結びつけることができないからです。

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実際にはどんな書類が集まるか

 除籍・原戸籍の謄本の取得には、1通750円の手数料がかかります。また、昭和初期に生まれて昭和20年代に結婚後、離婚せずに配偶者を残して死亡した人だとつぎのような除籍謄本類が集まることになります。新しい順に、

  • 直近の戸籍謄本(コンピュータ化されている)
  • コンピュータ化直前の戸籍をコピーまたはスキャンしたもの。平成6年から改製が始まった原戸籍の謄本
  • 昭和33年から改製が始まった原戸籍の謄本
  • 死亡者の父を戸主または筆頭者とする除籍謄本
  • 死亡者の祖父を戸主とする除籍謄本

 結婚や離婚の回数、認知や養子縁組や転籍の有無、およびそれらのタイミングによっても異なりますが、これらのイベントが多いひとほど必要な除籍謄本類が増えます。とはいえ、新しい戸籍から古い戸籍に一つずつさかのぼっていけば次に請求したい除籍謄本類の本籍と筆頭者は必ず記載されていますので、普通の人でも請求できます。急がなくてもいいなら、戸籍の収集を士業に依頼する必要はほとんどありません。

ここで原戸籍という言葉がでてきました。原戸籍は、戸籍に関する制度が変わったために戸籍を作り直した前の戸籍の記録、と考えてください。行政の都合で戸籍を作り替えられて請求手数料を取られるのも妙な話ですが、とにかくそういう仕組みになっています。制度上、平成6年・昭和33年以降の十数年間にわたって大部分の市町村で戸籍が改製されています。

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相続人になる人の戸籍謄本

 上記のやりかたで死亡者の出生時までさかのぼったら、次は『死亡者の法定相続人になるひと』の現在の戸籍謄本まで下ってくるかたちで戸籍謄本類を収集します。

子が相続人になる場合は、死亡者が結婚したあと、子供が出生したときには親(死亡者)と同じ戸籍にはいっています。その後、子の結婚にともなって子が除籍され、子とその配偶者を単位とする新しい戸籍が新しい本籍地と筆頭者で作られていきます。こちらは、各相続人の生存あるいは被相続人より先に死亡して相続人にならないことが確認できるまで請求を繰り返します。

これらの戸籍謄本類の収集の難しさを強調して数万円で収集を代行する業者がいますが、感心しません。
上記のとおり戸籍謄本類にはそれ自体に、次の書類を請求するための情報が記載されているし、仮にそれが読み取れなくても役所で読み取ってもらうように依頼することは可能だからです。

筆者の事務所では、戸籍謄本等の収集による相続人調査の費用を上限1万円としています。専門知識というよりは手間に応じた費用です。

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遺言書または遺産分割協議書

 被相続人が遺言を残さずに死亡した場合、残った財産(特に不動産)はどうやって配分したらいいでしょう?法定相続人が複数いる場合に問題になります。

 基本的には法定相続人全員による話し合いで決めることができ、遺産の分配であり当事者が同意する限りにおいて、どういう定め方をすることもできます。法定相続分の考え方はありますが、これに拘束される必要はありません。この話し合いを遺産分割協議といいます。遺産分割協議を成立させるには、持ち回りであれ同時にであれ相続人全員が同意している必要があります。

 死亡者名義の不動産について遺産分割協議を経て相続登記をする場合には、協議の内容を書面にした遺産分割協議書、遺産分割協議書には全相続人の実印による捺印、全相続人の印鑑証明書の添付をするよう定められています。これらが相続登記で重要な必要書類になってくる一方、遺言書が適切に作られていれば必要でなくなる点に大きな違いがあります。
言い換えると、適切な遺言書は相続登記の申請を圧倒的に楽にします。

 遺産分割協議の内容は相続人が同意すれば自由ですので、合意のまとまった相続財産から遺産分割協議書を作り実際に遺産を分配していく(預金の解約や不動産登記をおこなう)こともできますし、遺産の一部だけについて遺産分割協議を行うこともできます。

 死亡した人が遺言を残しているかは、探してみないとわかりません。また、発見しても自分に不都合なことが書いてあると知った相続人が隠す・持ち去る・有効性を訴訟で争うということもあります。

 公正証書遺言(公証役場で公証人に対して遺言の内容を伝え、これを公正証書にしてもらう形式の遺言)は公証役場に保管され、どの公証役場で遺言を作成していても保管の状況を検索してもらうことができます。遺言の有無および有効性という点で優れる遺言の方法です。

 遺言が自分でできるという書籍や説明書のセットを購入して自分で遺言を作成するものは私署証書遺言になりますが、相続をめぐって争いの発生が懸念されるなら採用するべきではない形態です。上記のとおり、私署証書証書遺言は見つからなかったり隠されたりすることに対して十分な対策ができません。

 形式はどうあれ、有効な遺言が見つかってそれに不動産に関する相続分の指定が書いてある場合は遺言のとおりに登記することができます。遺言にしたがって相続登記をする場合は遺産分割協議の必要はありません。相続人の遺留分を侵害する内容で遺言が書かれている場合でも、遺言による相続登記そのものは可能です。遺留分減殺請求権を行使するかどうかは、相続人の自由だからです。

 有効な遺言書がどこかにあっても、それに気づかないまま全相続人が協議すれば遺産分割協議にしたがって相続登記をすることが制度上は可能です。したがって、法定相続人全員の反発を招きそうな私書証書遺言(内縁の配偶者や認知していない子供に財産を遺贈したい、など)は実現されない危険があることになります。公正証書遺言であっても、遺言があることそのものを当事者が知らなければ検索をかけようとも思わないはずですから、放置されて終わることになってしまいます。死因贈与契約の締結なり信託契約の設定といった遺言ではない手段をとって相続時の対策とすることはできますが、財産を譲る相手と事前に契約しておく必要があります。

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遠隔地の土地建物・無価値な不動産を相続したら−それでも現地確認を−

 県外のご実家など遠隔地の住宅を相続したが住むつもりがないという問い合わせを受けることがあります。この場合、誰か一人に不動産を相続させたうえでその人に売却手続きをしてもらい、代金を相続人たちで分割することは遺産分割協議として可能です。

相続した不動産を相続人たちで共有してから売却することも当然可能なのですが、不動産業者との契約からはじまる売却までの手続きに共有者全員が関与することになり、手間がかかります。

 ある土地だけ相続人の誰も相続したがらないし売れそうもないがどうしたらいいか、という問い合わせについては、残念ながら適切な対応策が思い当たりません。
本当に不要で、相続時の登録免許税を納めるほどの価値もなく、不法投棄などに悪用されたり放火されたりするという現実的な脅威もない物件であることを確認できたなら(つまり、いちどは現況を確認してから)、なるべく手間やお金をかけずに済む手続きだけしておいてはどうか、という助言をすることもあります。相続登記をしなくても、遺産分割協議にあたってある土地の価値がないということで全相続人の見解を一致させられるなら、誰か適当な一名にまとめて相続してもらう遺産分割協議だけはしておくことをおすすめします。

典型的なのは原野商法で買わされた、どうしようもない田舎の山林や宅地です。それらについても相続登記をしっかり実施して手数料を順当に取る司法書士もいますが、これは個性としか言いようがありません。法律的には権利関係を相続登記ではっきりさせることが望ましいですが、単に説明不足なまま手続きしているだけの士業もいそうです。筆者は、遺産分割協議未了のまま不動産を放置して関係する相続人が増えるのを防ぐために遺産分割協議だけはしておいたらどうか、という考え方を取ります。

相続人のみんなが忘れているような土地の相続登記を無理におすすめして報酬を稼ぐことはないのですが、第三者からみて所有者不明な土地を作り出すようなことはなるべく防ぎたいと考えています。

こうした不動産を自分で時間のあるときに相続登記したい、という方には、登記相談を通じて協力します。

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不動産を相続する人の、住民票

 これは順当に取得できる必要書類です。
ただ、遺産分割協議で住宅を相続することに決め、あとでその家に転居するような場合は注意が必要です。

 転居前の住所でも遺産分割協議を経て相続登記はできます。この場合は不動産の持ち主の住所として転居前の住所が相続登記後の不動産の登記に記録されることになります。
 当然、相続登記後に転居を実行すれば登記情報に記録されている住所と現住所が違うことになります。

その後、不動産をさらに売却したり担保に入れるためには、登記情報に記録されている不動産所有者の記載を旧住所から新住所に書き換える登記申請(所有権登記名義人住所変更登記)が必要になります。
実費もかかるし司法書士に頼めば報酬も必要なので、遺産分割協議で相続した家に転居するなら最初から転居後の住所で相続登記をしたほうがよいはずです。

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評価証明書

 相続登記をおこなう前に評価証明書を取得する場合は、固定資産税の納付書に記載されている(または、登記上の所有者になっている)死亡者と評価証明書を申請・取得する相続人の関係を戸籍謄本等で明らかにする必要があります。

 具体的には、死亡した人について死亡の記載がある戸籍謄本等からさかのぼって実際に評価証明書の発行を請求する人につながるまでの戸籍・除籍謄本まで集めて、『被相続人が死亡していること』と評価証明書を取得する人が『少なくとも、法定相続人の一人である』ことが窓口担当者に示せればよいです。集めた戸籍類は窓口で提示すれば返ってきます。そのまま相続登記の必要書類として使えますので、先に取得しても無駄にはなりません。

 被相続人と不動産を共有している人が生存していれば、その人に取得してもらうか委任状を発行してもらい、生きている共有者の代理人として取得することもできます。評価証明書を取るだけならこちらのほうが簡単です。

近年、この評価証明書を相続登記の必要書類としない法務局が増えつつあります。市役所等から不動産価格のデータを提供されるようになったためです。評価証明書に代わる評価通知書が市区町村役場で無料で発行できることもありますので、相続登記を申請する不動産の個数が多い場合は市町村等で確認してみてください。

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相続登記の手続きに必要な費用

登録免許税

相続を原因とする所有権移転登記の場合、税率は

  • 固定資産税の評価証明書記載の価格×0.4%

です。評価額1000万円の土地なら4万円です。

通常は現金を用意し郵便局等で収入印紙を買い、それを登記申請書に貼って納付することになります。
当事務所ではクレジットカードを用いた送金受け取りのサービスを利用しており、相続登記の登録免許税についてもお客さまのクレジットカードでの収納を取り扱います(実費および司法書士報酬について対応します)。

相続登記を経て不動産を取得する場合は、不動産取得税はかかりません。このため、不動産の名義変更に要する一連の実費は生前贈与や売買より大幅に少なくて済むことになります。

固定資産税がかからない土地の登録免許税

公衆用道路の持ち分や保安林である山林など、ふだんは固定資産税が課税されない土地でも相続登記では登録免許税がかかります。

このため相続登記の申請前に、法務局または市区町村役場に問い合わせて土地の評価額を算定する作業が必要です。各地で方法は異なり、煩雑ではありますが一連の作業はそう難しくなく自分でもできるものです。司法書士も相続登記の際にそうした作業を代行しています。市町村役場の固定資産税担当部署に問い合わせて、その地区での作業手順を確認することから始めるとよいでしょう。この打ち合わせと作業を通じて集めた書類(法務局が別の近傍地を指定した書類や、指定された近傍地の評価証明書など)は必要書類として相続登記の申請に添付します。

墓地については、固定資産税も所有権移転登記の登録免許税もかかりません。

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参考文献

この他の参考文献

相続登記の本人申請・必要書類に関するもの

相続・相続対策に関するもの

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