解雇に関する請求

解雇予告手当の支払いを求める場合

これも、『労働基準法(第20条)の規定によって請求できるお金』であることを意識してユニットを作る必要があります。

解雇予告手当は賃金ではありません。したがって、賃金や労働基準法のほかの規定によって支払義務が発生するお金とは明確に分けて書く必要があります。賃金は契約によって発生する権利であるのに対し、解雇予告手当は契約に加えて労働基準法の規定があってはじめて発生する権利だからです。

文案の作成に当たっては、ここでも解雇予告手当の正確な算定が必須です。特に、サービス残業などで『未請求の割増賃金』がある場合、これを含めて算出するかどうかで金額が恐ろしく変わることがあります。

最小構成例
労働基準法第20条第1項および第2項の規定により、金○○円の支払いを求めます。

事業主が労働者をクビにした、という事実そのものとそれに適用される法律の内容は、こちらが書面で指摘するかどうかとはまったく別に存在しますので、一応これで話は通ります。

なお解雇予告手当、というコトバは、正確には労働基準法の条文には出てきません。よってこのコトバの使用にこだわるより、根拠となる条文を示した方が文書として正確になります。

少なくとも上記の例で請求はできます。ですがお話をわかりやすくするために、ここでも複数ユニット構成をとることをおすすめします。こんな感じです。

解雇予告手当請求の、推奨ユニット構成例
1.解雇の事実の指摘(簡潔に。解雇言い渡しの日と解雇の日を書くことは必須) (ユニット1)
2.労基法第20条第1〜第2項の適用がある旨の主張 (ユニット2)
3.計算した金額の支払い請求 (ユニット3)

ユニット1で、事実の描写を持ってくるわけです。事実→法律→お金の請求という構成をとることは、これまで述べてきたのと同じです。

ユニット1.解雇の事実 貴社代表取締役の鈴木慎太郎は平成25年1月25日夕刻、私に対して突如「冬の日本海を見に行ってくる。会社は当分閉鎖するから、すぐほかの勤め先を探してくれ」と申し向け、同日をもって解雇する旨言い渡しました。
ユニット2.労基法第20条第1項および第2項の適用 本件解雇については、労働基準法第20条第1項の規定により、平均賃金の30日分の支払義務があります。
ユニット3.解雇予告手当の請求 よって私は貴社に対し、金○○円の支払いを求めます。

これでOKです。ユニット3で、解雇予告手当として金○○円の支払いを求めます、としても構いません。根拠が労基法第20条第1項および第2項であることは、ユニット2で示しているからです。

ユニット1.をもう少し詳しく見ます。社長がいきなり会社を閉めて冬の日本海に旅立ってしまう、従業員は即時解雇ということです(ここで鈴木慎太郎は説明上の仮名です!)。

一つのテクニックとして、解雇の事実がくだらない理由や事情にもとづくほど、それを正確に書いておいた方がよいことが上げられます。実際にくらった決定的な一言があればそれを、そのときの状況とともに書いて出すのです。

後日訴訟になった場合、『自分で書いて出す陳述書』というのは証拠になります。自分で、そのときのことを書いて出しても証拠たりうるのです。つまり、このときに備えておくわけですね。

ここまで周到でなくとも、ユニット1.としてわざわざ事実を書く以上は、

  • 実際に言い渡した人は誰か
  • なにか理由をきいたならそれを
  • 言い渡しがあった日
  • 最終の勤務日

これらを、それぞれ押さえておきます。特に言い渡しの日と最終勤務日は、労働基準法第20条を見ればわかるとおり平均賃金の日数ぶんの計算に必須です。後日訴訟になる場合にも必ず書くので、ここでも書いておきましょう。

注意

不当解雇に関するお問い合わせのなかで、解雇を言い渡されたので解雇予告手当もほしいが労働審判等で解雇無効を主張して解決金もほしい、という人がいます。

解雇予告手当は解雇を有効にするために支払わなければならないお金であるのに対し、解雇無効を争う(地位確認請求する)労働審判や通常訴訟では、解雇が無効であるという前提で申し立てをおこなうので両者どちらもほしい、というのは矛盾します。

さすがにそれは虫がよすぎ、ですよね。

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解雇の撤回を求める場合

中小企業のみならずある程度の規模の会社であっても、いったんなされた解雇の意思表示を撤回させてその後円満に復職することは極めて困難です。

ですが、その後あっせんの申し立てで退職金を上積みさせたり、訴訟なり仮処分を派手にやっても解雇無効を主張すべき理由があるとか、あるいは任意の交渉を有利にするカードと割り切って、とりあえず解雇撤回を求めた方がいいこともあります。

文案では必須のユニットとして、言い渡された解雇が無効あるいは不当(解雇権の乱用)であること、よって撤回を求めることを書いておくべきです。ですがこれも、できる限り事実の指摘と、こちらの法的主張をつける3ユニット構成をとることをすすめます。まず、不当解雇の例を示します。

解雇撤回をもとめる場合の、推奨構成例1
ユニット1.解雇の事実 貴社代表取締役の鈴木慎太郎は平成25年1月25日夕刻、私に対して突如「冬の日本海を見に行ってくる。会社は当分閉鎖するから、すぐほかの勤め先を探してくれ」と申し向け、同日をもって解雇する旨言い渡しました。
ユニット2.法的主張 本件解雇は、労働契約法第16条の規定により、無効です。
ユニット3.解雇撤回の請求 よって私は貴社に対し本件解雇の撤回を求めるとともに、現在も貴社で就労する意思があります。

ユニット3.で、解雇の撤回および解雇言い渡しの日以降現在に至るまでの賃金の支払いを求めるとしても構いません。大紛争になってしまうので、単に交渉のカードにしたい場合はおすすめしませんが。

なお、ここではあくまで解雇が無効である、という立場をとっています。ですから当然、解雇予告手当の支払いを請求することはできません。

事情によっては、ユニット2.で適用する法律の条文が違ってくる、そして、そのほうが後々有利になることがあります。

具体的には、労働基準法ほかの法律で『解雇を禁止している場合』にあたる解雇があったときです。労働者が労働基準法第104条の申告をしたことに怒った社長が解雇を言い渡した、というような事案を考えます。

労働基準法第104条第2項では、使用者は同条第1項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。という規定があります。

労働契約法第16条は、あくまで一般的に不当解雇の無効を宣言しているものですので、同法第104条第2項のように、特別な場面で解雇の禁止をしている規定がある場合には、そちらを使うのです。この場合も3ユニット構成をとります。

解雇撤回をもとめる場合の、推奨構成例2
ユニット1.解雇の事実の指摘 貴社代表取締役の鈴木慎太郎は平成25年1月15日夕刻、私に対して突如「この職場ではオレが法律だ。労基署に申告なんて人並みなことをしてこの会社にいられるとは思うなよ」と申し向け、同日をもって解雇する旨言い渡しました。
ユニット2.法的主張 本件解雇は、私が労働基準法第104条第1項の申告をしたことを理由として私を解雇するもので、同条第2項の規定により、無効です。
ユニット3.解雇撤回の請求 よって私は本件解雇の撤回を求めるとともに、現在も貴社で就労する意思があります。

ユニット2.が変化しています。ですが、ユニット2だけではありません。ユニット1.での事実描写でも、実は工夫が必要です。ユニット2で使う法条が、労働者が労基署に申告したことを理由としての解雇を禁じた労働基準法第104条2項ですから、これを適用するために『法違反の事実があった』ことを書いておいたほうがいいのです。

例1と比べてください。労働者の解雇の理由は、『代表取締役がいきなり、冬の日本海を見にいきたくなった』ことにあります。2番目の例では、『労働者が、労働基準法第104条第1項の申告をした』ことが理由です。

今回、解雇の無効を主張する根拠は労働基準法第104条第2項ですから、解雇理由が本項にあたる違法なものであることを指摘しておかないとお話になりません。

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Last Updated : 2013-07-09  Copyright © 2013 Shintaro Suzuki Scrivener of Law. All Rights Reserved.