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ウェブで探せる「無料法律相談」は、
なんのためにあると思いますか?あなたのためではないようです

給料が未払いになったとして…まず、諦めないことですが

これからどんな手続きをとれば、未払いの給料が回収できるのでしょう?
そのために、誰に相談するのがよいでしょうか?

たとえば勤め先の倒産で給料未払いが発生した場合でも、未払い賃金の立替払いを申請できることがあります。会社がつぶれた場合でも、すぐあきらめずに相談してみることをおすすめします。この制度は労働基準監督署が扱っています。

会社は営業していて、未払いにされた残業代や給料を請求したい場合はどうでしょう?

こうした給料未払い問題への対応は、このコンテンツで説明するいくつかの選択肢から使い分けていくことになります。労働契約に基づいて働いているという点で、正社員もアルバイトも派遣労働者も給料未払いやサービス残業への対処法という点であまり違いはありません。これから説明する手続きの多くは、裁判所で扱うものです。

労働紛争を解決するにあたって、手続きを扱う役所が分かれていたり労働相談をする場所によって回答の質や内容が違うことは、給料未払いに関する法律相談での大問題の一つです。

相談にたどり着くまえの大問題

ここ1〜2年で、給料未払いをめぐってさらに問題が増えました。
このコンテンツをお読みの方々のように検索エンジンから情報収集を試みた場合、相談先にたどり着くのが難しくなってきています。

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理想:適切な相談で自分の権利を知ることが大事です実はこれが困難です

他の人や会社のはなしを聞いても無意味なことがあります。

給料未払いに限らずどんな労働問題でも、自分が相手に対してどんな主張ができるのか(未払い賃金など労働債権の請求であれば、いくらお金を請求でき、その根拠は何か=労働契約か強行法規か)を早く正しく知ることが必要です。

これは全ての民事紛争への対処の基本です。しかし未払いの給料や残業代の請求でも、インターネットにあふれる情報に惑わされて必要な対応が見えていない人は多いのです。

自分でできた人が、正しくできたとはかぎりません。

たとえば自分には未払いの『退職金』があると思っている人でも、その勤務先企業で会社に退職金の支払い義務があるかないかは労働契約(および賃金規程・退職金規程など、企業内の決まり)で決まってくるものです。退職金については、よその会社の状況を聞くなど掲示板で相談してみるのは無駄です。

給料未払いについて少額訴訟の訴状を書いてみました!手続きは全部自分でできました!という人もいます。
しかし未払いの賃金のうち基本給を回収しただけで、残業に伴う未払い割増賃金の請求が抜け落ちているのに気づくものもあります。

解雇予告手当を支払ってもらいました、とは言っているものの算定根拠になる『平均賃金』に、未払いの残業代を含めていないために請求できる金額の8割ぐらいしか回収できていない、という情報もありました。これでは自分の権利を守っているのか捨てているのか、傍目で見ていてよくわかりません。

最近では労働審判手続きが簡単だ、というサイトも出てきました。これは、そうした手続きに誘導したい社労士や自分での申立の経験者のサイトに多い論調ですが、筆者は労働審判の申立にはかなりな準備を要し、決して簡単ではないと考えています。

経験者がネットで公開しているのは結局、自分の問題がたまたま解決できた人は『給料未払いは簡単に解決できる・賃金請求訴訟は自分で裁判を起こしても勝てるものだ』などといい、低品質で無料な相談を求める人はその周りに群れる、本人訴訟をはじめとするいろいろな行動を起こしたけれど目的を達成できなかった人は相手の狡猾さや裁判制度の不合理を嘆く…その程度のものです。
そうした情報のどれにあなたの状況が近いかは誰も判断してくれません。

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現実:適切な相談先にウェブからたどり着けない理由があります

上位表示を争うゴミサイト自称「キュレーションメディア」

平成29年6月20日現在、「給料未払い」という検索キーワードはgoogleで一日平均75回ほどの検索があります。
この語を含むページは51万件あまり存在するようです。

googleで「給料未払い」と検索したときの上位10位に表示されるウェブサイトのうち1件はこのコンテンツ(こちら給料未払い相談室)のインデックスページで、あとは次のようになっています。

『給料未払い』の検索結果
  • Yahooやgooなどの質問・回答掲示板 3件
  • 法テラス 1件
  • 法律事務所 1件
  • 広告で収入を得るための情報提供サイト 4件

これらのウェブサイトを通じて適切な法律相談先を見つけることは難しく、まして数十万円程度の給料未払い事案で具体的な依頼をすることはまず無理です。順にみていきましょう。

まずYahoo!知恵袋などの掲示板は運営母体が有力だから高順位に出てきている、というだけです。
中身は漠然とした質問に適当な回答があるだけです。

法テラスは無料法律相談を含む民事法律扶助制度への入り口になりますが、労働問題に詳しい弁護士を指定して無料法律相談を申し込むようなことは一般的にはできません。
また、法律扶助であれなんであれ請求額の少ない事案では依頼を受ける弁護士や司法書士の報酬も少なくなり、受任そのものが期待しにくい実情は変わりません。

もっとわかりやすいのは1件出てきた全国に支店を有する大手弁護士法人のウェブサイトです。ここは未払い残業代などまとまった請求額(弁護士からすれば、まとまった報酬額)の事案は着手金無料・相談無料です。
しかし、「残業代の請求を含まない相談・依頼は受け付けない」旨の記載を出しています。露骨過ぎます。

仮に残業代請求を込みにして給料未払いに関する依頼を出せたとしても、回収時には20万円なり30万円の最低報酬額に加えて獲得したお金の十数パーセントの成功報酬を取る設定なので、50万や60万の請求額なら弁護士費用で半分方吹っ飛ぶか、そもそも相手にされないでしょう。

わかりやすく言えば、「20万や30万の給料未払いの依頼なんか受けない・報酬体系もそう作ってある」というのが近年労働者側での労働問題解決市場に参入した士業の方たちの考えです。

これは、新規参入した事務所が数年前までバブル化していた貸金業者相手の債務整理や過払い金返還請求をやっていた(その売上で食えなくなった)ことも影響しています。基本的にこの人たちは、定型的で請求額がまとまった依頼で楽に稼ぎたいわけです。それが昔は過払い金、いまは残業代か不当解雇になった、というだけです。別に、弁護士や司法書士が急に労働者の権利保護に目覚めたわけではありません。

受任の際に説明を丁寧に行わず儲かる依頼をするようあおる、有資格者と話ができず事務員が対応する、依頼人の意向を無視して適当に和解する、などの弊害は労働問題の解決を依頼した場合でも指摘されるようになりました。これも過払い金返還請求が流行した頃と同じ問題です。

これは弁護士だけの問題ではありません。自分が代理できる範囲に140万円までの制限があることを説明しない司法書士は過払いバブルのときも残業代請求でも見かけますし、弁護士と司法書士以外にはやってはいけないはずの労働審判手続申立書作成をサポートするという社会保険労務士の存在も指摘されています。

コンテンツマーケティングの弊害ゴミサイトしか見えないわけ

自分の事務所でウェブサイトに出すコンテンツを作成・管理できない小規模な弁護士事務所・司法書士事務所のなかには、情報提供サイトに広告を出稿して問い合わせがくることを期待するところがあります。

ここで情報提供サイトと筆者が言うのは、労働問題その他さまざまなテーマでコンテンツを大量に公開し、検索エンジンからのアクセスを集めて収入につなげることを目的としているウェブサイトです。

ウェブサイトに有用な情報をたくさん掲載して自社のサービスへの信頼度を高め、ひいては依頼や売上につなげる手法をコンテンツマーケティングといいます。理想は「たくさんの有用な情報」を掲載することなのですが、現実は「たくさんのアクセス」が集まる状態の実現が指向されるのが特徴です。そのほうが制作者や広告募集者(サイトの運営者)が成果をアピールしやすいことと、広告を掲載して稼ぐタイプのサイトなら情報の質のよしあしより検索エンジン経由での来訪者数が利益に直結するからです。

これに加えて、ウェブサイトの運営主体がウェブマーケティングの会社や実在しているのかわからない個人など、知識や経験があるわけではない人たちが作っているのもコンテンツマーケティングの大きな特徴です。

弁護士や司法書士の事務所の広告や、閲覧者がクリックすればウェブサイト運営者に収入が発生するPPC広告などを検索エンジンから来た閲覧者にみせること、そのためになるべく多くのアクセスを集めることが情報提供型のウェブサイト運営者の目的です。

別に、閲覧者のために作っているわけではありません。金儲けのためです。

Welqを覚えていませんか?あれで「キュレーション」とはよく言った

こうしたウェブサイトはクラウドソーシングの業者を通じて素人の下請けライターにコンテンツを作成させることがあります。記事を書く人に労働問題に関する知識や経験を求めるのは野暮というもので、Denaが運営していた医療情報サイトで問題が発生し閉鎖に追い込まれたのは記憶に新しいところでしょうか。

彼らはこうしたコンテンツマーケティングのためのウェブサイトを「キュレーションメディア」記事作成者を「キュレーター」などと呼んでいましたが、ウェブで情報を拾ってくるだけの素人にすぎません。

そんな人たちが書き散らすパクリや事実誤認や思い込みに基づく情報が1文字0.2〜0.5円程度で大量に買われて、情報提供サイトになるのです。昨年は医療情報サイトのWelqがこの問題で閉鎖に追い込まれました。Denaは規模が大きかったからまともな対応=閉鎖に至っただけで、それ以外の中小零細マーケティング会社は引き続き、素人がコピペやパクリで作ったコンテンツを買い、編集し、素人を集めるために公開を続けているのです。

そんなサイトでも文字情報の量は多いので、うまく作れば検索エンジンに上位表示され、順当にアクセスも増えます。しかし掲載されている情報が正しいかどうかは運次第としか言えません。

労働問題を扱う情報提供サイトでは、裁判所への手続きである支払督促を「支払催促」と言ってみたり、少額訴訟と訴訟後の強制執行である少額訴訟債権執行を混同して説明するなど実務家なら絶対書かない間違いを見かけるほか、運営者が違う複数のウェブサイトにほぼ同じ文章表現がある(どちらかがどちらかをパクったり、記事が重複して納品された)などはふつうに見かけます。

どうせ重複する一方が先行する他のウェブサイトの記載を見て作ったに過ぎませんから、上位表示されるわりには独自性も正確性も期待できない、そのくせ小手先の文章作成のテクニックだけは使って派手にあおる(「給料未払いへの対応はこんなに簡単!3つの手続きを解説」・「給料未払いの無料法律相談先ベスト5」などと見出しをみせてクリックさせる)というのも共通の特徴です。

検索上位に出てきた情報がたくさんあるサイトを、信用できない時代が来てしまったのです。

「給料未払い 無料法律相談」をお探しでしたか
タダより高いものは、なさそうですが

上記のような検索キーワードで相談先を探す人、いかにも多そうです。「東京」などの地区や「弁護士」といった職能で限定するなどの検索を含めれば毎日数十件程度は検索が試みられています。

他の箇所でも説明していますが、自分が人をタダで働かせることができるかどうかはよく考えてみることをおすすめします。

士業の事務所の無料相談は一般的に、客寄せです。儲かる依頼を誘致するためのものです。そうでなければ民事法律扶助制度による無料法律相談ですが、これは30分実施して法テラスから5400円支給をうける、というものなので30分を超えて相談を続けるメリットが実施担当者側にありません。

給料未払い・賃金未払い問題で無料法律相談をすると標榜する弁護士のウェブサイトを複数確認したところ、二つの特徴を見いだすことができました。一つは「残業代請求」への誘導、もう一つは成功報酬の最低額を20〜30万円に定めていることです。残業代請求を含まない基本給未払いの問題にちゃんと対処しうる費用体系を見いだせない、とも言えるでしょう。結局彼らがほしいのは、給料未払いというより金額がまとまった残業代請求の依頼です。

もちろん法律業界でも聖人君子の存在は否定しませんので純粋に善意で無料法律相談を維持している人がいないとは言い切れません。仮にそうした人が実在する場合、その人の事務所をいったい誰が維持しているのか(維持費をまかなえる売上をもたらしているのか)わからない、ということになります。

筆者は、そんな都合のいい相談先が存在すると信じる方がおかしいと考えます。
筆者の事務所では、来所できる方には民事法律扶助による法律相談を片っ端から適用します(もちろん、要件が満たされることは確認しています)が、電話で無料相談を希望する人は片っ端からお断りにしています。そうでもしないと事務所が持ちません。

この点、無料法律相談を希望する人にも問題はあります。

検索から泣き寝入りへ良心的な事務所が検索上位に出られない世界で

以上のとおり労働問題で相談先や情報を探して検索エンジンからさまざまなサイトに訪れる閲覧者は多くの場合、カモにされながら漂流することになります。

サイト運営者からすれば、アクセスを集めた閲覧者は請求額の大きな依頼をくれるかPPC広告をクリックしてくれるか広告を出してくれる事務所に行って(で、広告料相応の売上がなければ依頼を断られて)くれることが目的なのですから。こうした実情を知らないままいろいろなウェブサイトを見続けても、徒労感が増すだけだと思います。

「給料未払い」「不当解雇」など検索件数が多いキーワードでは、検索結果11位より下にもこうした「上位に表示されたいけれど、そこまで行けないゴミサイト」がひしめいています。検索結果の半分以上が役に立たない質問回答掲示板とゴミサイトなら、まじめに相談先を探す人たちが行き場をなくしても不思議ではありません。

あらためてgoogleで「給料未払い」での検索結果30位まで見てみたのですが、数年前には見かけた個々の事務所のウェブサイトはあらかた駆逐されていました。ウェブサイトのコンテンツを自社で管理する意思とお金や手間の負担能力がある当事務所や若干の大手弁護士法人を除いて、こうしたキーワードで特定の依頼・相談先にたどり着ける検索結果にはなっていない、そんな時代になってしまったようです。弁護士の事務所は当然、弁護士なりのお値段でしか依頼を受けてくれません。

筆者のみるところ、こうして実際に困っている人の泣き寝入りが促進されていくのがここ1〜2年の状況だと考えています。

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労働相談に応じてくれそうな役所・事務所・団体はありますが…

検索結果にあふれるゴミサイトのなかからなんとか相談先を探すことができたと仮定しましょう。そうやってたどり着いた公的機関や法律関連資格をもった人なら適切な労働相談を提供するかといえば、実はそうでもありません。当事務所の別のコンテンツ『よりよい労働相談のために』では、さらに詳しく説明しています。ここでは簡単に実情をお話ししましょう。

裁判所や労基署などの役所はどうでしょう?立場上の制約があります

裁判所はその立場上、争っているひとの一方を支援することがありません。このため、裁判の手続きに関する質問には答えてくれても労働問題の中身に関する法律相談には答えません。裁判所での相談で賃金未払いなどの回収のために最適な手続きを提案してくれるということは、絶対ありません。
給料未払い問題を相談する場所として、裁判所は考えなくていいと思います。

相談先ではなく法的手続きとしては使わなければならない裁判所ですが、裁判所にそなえつけてある賃金請求訴訟(給料未払いの請求をする場合の定型書式の訴状は、裁判所でもらえます)の訴状は、各労働日の時間外労働時間の厳密な計算を考えていないつくりです。長期にわたるサービス残業=時間外労働割増賃金の支払いを求めるような労働紛争には使えません。定型書式が想定する簡単な事案から少し外れると、残念ながら使いにくいものになります。

公共職業安定所の職員が労働基準法所定の残業代の未払い額を正確に計算できない、というのも見ました。

当事務所にくるお客さまの多くは、給料未払いにあって『まず労働基準監督署に相談に行ったが相手にされなかった・ムダだった』からここに来た、とおっしゃいます。

もちろん職安や労基署が給料未払いやサービス残業の相談にまったく無力ではないのですが、かといって全能とはほど遠い状況にあります。

民間の事務所なら、どうでしょう?資質にも能力にもばらつきが…

個々の弁護士・司法書士・行政書士にも、労働関係の紛争の相談に応じるという事務所がたくさんあります。しかし、労働紛争・労働法について知識の質、順法精神、加えて執務姿勢に差がありすぎます。

労災保険雇用保険未加入・給料未払い・サービス残業・不当解雇・職安へのうその届け出などは、筆者は行政書士事務所に事務員として勤めていたころに体験させてもらいました。町の法律家を標榜する士業の方でも、事業主してなら日常的に法を破る例は開業後、自分が相談を受ける側で聞かされています。

こうした不良事務所の労働条件は、工場に労働者を派遣する偽装請負業者(脱法的人材派遣業者)よりひどい面があります。

雇用保険未加入もサービス残業もOK、と弁護士は言った経験談です

筆者が補助者だった頃、行政書士を相手に労働訴訟を起こしたときに出てきた被告代理人の弁護士は、
『当事者の合意があれば雇用保険未加入も残業代不払いも公序良俗に反しない』
と答弁書で言ってきて(!)、裁判官にたしなめられる始末です。

ある法律相談で、残業代請求訴訟を自分ではじめた、それにもかかわらず割増賃金の計算がぜんぜん違っている、という方がいました。

ですが裁判書類作成の相談中にこの人から、『自分で訴訟を起こす前に、まず司法書士会の無料相談に行ったんですけど』と言われて愕然としたことがあります。司法書士の補助者から労働相談を受けたり、依頼を受けて未払い賃金請求の代理人になったこともあります。

このコンテンツの各所で述べるとおり、以前は弁護士や司法書士を儲けさせた債務整理バブルの終了後、定型的でかんたんに思える業務としての残業代請求に参入する事務所が増えたことでこの問題はいっそう複雑になりました。

労働者側からみると、依頼を受けてくれそうに思える事務所や情報だけはたくさんある(が、実際はそうではない。儲かる依頼しか受けてもらえず、無料相談が儲からない案件の排除のために機能する)わけです。

給料未払いへの対処ができそうなこれらの3士業については、ふつうの人からは一応法律専門家に見えます。
ですがうっかり『ハズレ』を引くと、依頼人としてかなり悲惨な目に遭う可能性がある、と思っていたほうがよいでしょう。相談料金を無駄にしたという程度なら、残念ながらよくあることだと考えてください。

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労働紛争に、司法書士はどう対応できるでしょう?個々人次第です

筆者ももっている資格である司法書士は、未払い賃金や残業代の回収のためになにができるでしょうか。

簡易裁判所で訴訟代理ができる司法書士は、給料や残業代の未払いなら相手に請求したい賃金額が140万円を超えない場合に法律相談をおこなうことができます。残業代未払いの相談や代理人としての請求を行うとウェブサイトに出している司法書士事務所も、ここ数年で増えてきました。

実は、試験から開業後までの全過程で給料未払いへの対処方法というより労働基準法を知らなくても、試験に合格もすればその後の実務にもほとんど問題ないように司法書士の制度はできあがっています。

一般的な司法書士に、給料未払いをはじめとする労働紛争に関する法律相談や裁判書類の作成あるいは簡易裁判所での代理を依頼する場合には、『その人が開業後じぶんで勉強していて、労働法や労働紛争の実情をよく知っていてくれること』を期待するしかありません。

いくら法律相談が無料でも、あるいは本人訴訟を前提としていても、給料未払い、特に割増賃金や平均賃金の未払いに関する法律相談を司法書士あるいは行政書士といった人たちに持ち込むのは冒険的だと考えます。

司法書士の法律相談は140万円まで労働相談では厳しい限界です

司法書士が可能な法律相談には、争っている金額に上限140万円までという制限があります。

未払いの残業代を頑張って計算した結果この上限を超えるために法律相談が打ち切られたり訴訟代理してもらえないとか、請求額が算定できない(という扱いになる)解雇の不当性を法律相談で判断してはならない、という大きな制限があるため、労働紛争において決して対応能力が高い資格とはいえません。

『○○書士は町の法律家です』…と言う人もいますが、だからといってその人が労働法の知識がかならずある、適切に合法的に法律相談ができるというわけではないのです。

それでも、法律扶助が使えます140万円以下の相談で、ですが

民事法律扶助をあつかう司法書士事務所で、その制度を利用して無料の法律相談を受けることは悪くないでしょう。この場合は無料の法律相談といっても相談担当者には法律扶助の制度からお金が支払われます。依頼を集める思惑で開催される無料相談からは、少し遠ざかることができます。

また、同じ紛争について3回まで民事法律扶助で無料の法律相談を受けられますから、次々に違う弁護士や司法書士に相談してみていちばんよさそうな人を発見する、という使い方ができるはずです。

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社会保険労務士ならどう対応できるでしょうか?裁判以外なら?

筆者が持つもう一つの資格である、社会保険労務士ならどうでしょう?
士業としては、労働法についてある程度まとまった知識があることが期待でき、業界団体で常設の相談機関(総合労働相談所)をもっています。この人たちは給料未払い問題に、どう関与できるでしょうか?

これからいろいろな手続を眺めていくとおり、労働相談はさておき給料未払いやサービス残業の解決のために社会保険労務士が労働者の依頼を受けてできることはそう多くありません。裁判手続きにほぼ関与できないのが不便なところです。

都道府県労働局へのあっせん申立代理や労基署への申告への同行を、労働者側でおこなう事務所は出てきています。
しかしよく見ると、残業代請求や不当解雇に関する労働審判手続申立書を作成した、相談して支援している、というブログの記事がウェブサイトの中に混ざっていたりします。それで弁護士会から警告を受けている事例もあります。

社労士による労働審判手続の支援には、違法の疑いがあります

社会保険労務士が労働審判手続申立書を作ったり、労働審判手続きに関する法律相談はできません。こうした活動は弁護士法または司法書士法に違反する可能性が高いのです。
社会保険労務士のなかにはそれがわかっていない人もいるし、ウェブサイトに出す費用体系をみるかぎり、依頼費用がそう安くもない事務所もあります。

法律上決められた根拠とは別の理由で考えてみましょうか。
もし社会保険労務士が裁判書類の作成をサポートしたり相談できるというならば、逆に労働審判以外のさまざまな裁判手続きについても相談できないのはサービスの提供の仕方として不便だ、という方が消費者にはわかりやすいかもしれません。

労働審判だけしかやらない事務所より、他にもさまざまな手続きを提案できる事務所のほうがいいに決まっていますね。つまり、法律的な正当性は棚上げして考えても消費者から見て不便なのです。

社会保険労務士は一般的に企業を契約先として、継続的な顧問契約というかたちで仕事と収入を確保することを目指すのが一般的な業態です。給料未払いのような『個人客の突発的な依頼』はこれとは対極的なものであって、一般的に歓迎されるわけではないことはいうまでもありません。労働相談のウェブサイトは持っているが実は経験があまりない、ということも残念ながらあります。

その反対に、どうみても無理な要求を労働者がしていて、当事務所では受けないご依頼を社会保険労務士の方が受けた、ということもあります。

士業の中には、やってはならないことをやる事務所もあります。

ウェブサイトで情報をとれる弁護士・司法書士など法律関連職能のなかで、お客さまからお金をいただいて裁判手続きに関与できるのは弁護士(法律相談および訴訟代理全般)と司法書士(訴状など裁判書類作成。司法書士によっては、簡易裁判所での訴訟代理および法律相談)だけです。

しかし、行政書士・社会保険労務士の中には労働紛争の解決のために『訴状や支払督促・労働審判手続申立書の作成や相談(彼らは支援とかサポートという言葉をつかうことが多いです)』ができるようなホームページを作っているところがあります。実際に依頼を受けている事務所も知っています。

これは、弁護士法や司法書士法に違反する可能性が高いものです。
もう一度考えてみましょう。自分は法律を無視しますよ、と言っている人に、ご自分の法律の手続きを依頼なさいますか?

自称『専門家』に気をつけて

そこが労働法に詳しい、給料未払い解決のために高い技量と経験と実績がある事務所なら、まだ救いがあります。

しかしながら、そうした違法事務所は『数ある分野の一つ』=商売のネタの一つ、として給料未払いその他の労働問題を扱っているにすぎません。その事務所のホームページをよく探してみましょう。
敷金返還だの交通事故だの離婚だの起業支援や助成金の請求だの、いろんな紛争や手続きの書式のサンプルや解説がたくさんならんでいませんか?

最近では手の込んだウェブサイトが出てきていて、『●●が専門です』というウェブサイトを専門分野ごとに独自ドメインをとって公開している事務所も出てきました。
こうしたやりかただと、その一つのウェブサイトを見ているだけならまさにその分野が専門に見えます。
しかし、運営している事務所名で検索するといくつもの分野ごとに専門のウェブサイトが出てきて、結局その事務所の専門はなんなのかがわからなくなるようになっています。

つまり、そこは本当は『専門分野が見えない事務所』なのです。
もっとも、こうした手法は弁護士や司法書士も採っているものですので、実はあなたが見ている『残業代請求専門』の事務所がほんとうは何を専門としているかは、事務所名などでよく調べてみる必要があります。

ウェブサイトを丸ごと譲渡して運営者が交代する、ということもあります。平成26年まで名古屋市内でインターネットに広告を積極的に出して給料未払いの客を集め、内容証明を出していたある行政書士事務所のサイトは平成27年に入り、県外の全然ちがう行政書士が運営しています。債務整理に関するウェブサイトは、運営者が複数回変わったのを見たことがあります。

あなたがみて魅力的なウェブサイトが来年も同じ事務所で運営されているかどうかさえ、わからない時代になったのです。

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労働組合やNPOはどうでしょう?相談無料なのはなぜでしょうか

士業の事務所のほかに、労働組合やNPOを自称する団体も無料労働相談をおこなっています。
これらの利用について判断するまえに、常識的なことをもう一度確認しておきましょう。

だれかが何かの活動をするには、お金がかかるのだ、ということを。

やっぱり、タダより高いものはないのです当然です

人が生きて行くには飯を食わねばなりません。
事務所を借りれば賃料や電気代が必要です。
公益的であれ利益追求であれ、なにかの活動が全くタダでできるはずはありません。

そうした当たり前のことがわかるなら、たとえ給料未払いに関する無料法律相談であれ誰かがあなたにタダでなにかしてくれるというのは、そこに種も仕掛けもあることに気づかねばなりません。

給料未払いで困っている人に魅力的にみえる『無料の法律相談』は、役所で提供するものは税金を使っているだけです。
士業の事務所でおこなう無料法律相談は依頼がほしい、ときには『儲かる依頼だけ』ほしいという狙いを秘めています。

無料相談をおこなうのが労働組合であれば、その組合への加入(つまり、組合費という収入を得ること)や自分たちの活動のPR(無料相談会実施などのプレスリリースを経て報道機関の取材をうける)という、それぞれ利益につながるからこうした無料相談があるのです。
OKWaveやYahoo!知恵袋など質問掲示板サイトでも、ポイントやコインの付与というかたちで回答者にインセンティブを与えています。

どんなに困っていても、給料未払いに限らずどんな紛争においても無料で救済をもとめること自体、ほぼムリなのです。

ただ、無料労働相談は依頼誘致につながるという点でわかりやすい士業の事務所に対して、労働組合は何をしようとしているのかが私にもよくわかりません。組合費を広く薄く組合員から徴収しているから他のひとに無料で労働相談をはじめとするサービスが提供できているということならいいのですが、そうではない組合もあります。

労働者が訴えたのは、労働組合現代版労々対立の実話です

平成22年になって、訴訟記録の閲覧からある労組の振る舞いの実情を垣間見ることができました。

その合同労組は不当解雇になった労働者を支援して県労働委員会にあっせんを申し立てたあと、会社から支払われることになった解決金を労働組合が直接うけとりました。
その後、各労働者には労組が解決金額の十数%のカンパを徴収したあとの残額を労働者に支払う約束だった、と労働組合は主張するのです。そこで紛争が発生し、労働者が合同労組を訴えて訴訟になったという事案です。(それに関するコラムへ)

給料未払いであれ不当解雇であれ、会社が労働者にお金を払うべきお金を、その労働紛争に関与した合同労組が勝手に料率をきめて一方的に徴収する自称『カンパ』がカンパといえるのかは非常に疑問です。
この紛争で、解決金は総額1500万円。労組がカンパとして労働者から徴収しようとした金額は225万円です。

なによりひどいのは、この争いで解決金の全額を労働組合が労働者に支払わずに預かっていて、労働者が弁護士を選任して労働組合に訴訟を起こしたあとも第一審の判決が出るまでそのまま支払わずにいたことです。

このように、労働組合すらまともではないものが混じっているのです。
しかしながらこの事案では、月に2千円程度の組合費で組合担当者を働かせて不当解雇を解決できると期待した労働者と百万円単位での解決金ピンハネをねらった不良労組が仲間割れしただけだ、という可能性さえあるかもしれません。

訴訟記録をみるかぎり、労働者はこの訴訟で被害者といえるかどうかは疑問です。

この労働組合は平成29年現在も存続していて、労働相談を定期的に実施するとウェブサイトで告知しています。
相談によっては社会保険労務士や司法書士の関与もあるということですから、社会保険労務士や司法書士のなかには知って知らずかとんでもない労働相談に協力しているひともいる、と考えねばなりません。

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結局、給料未払い解決のためには一体どうすればいいのでしょう?

これからの説明で、世の中にはいろいろな『法律関係者』=弁護士・司法書士・社会保険労務士・行政書士あるいはその他の団体といった人たちがいて、有料・無料の相談をしたり給料未払い問題の解決を標榜していることはおわかりいただけると思います。

資格も知識も経験すらないのにウェブ上に情報をばらまく「コンテンツマーケティング」の弊害も、相談先にたどり着く以前の問題として説明しました。

たどり着けた相談先では、労働者の利益とはまったく関係ないところで役割が分断されているのも見えてきます。
なにより重要なのは、特に少額な給料未払い問題の解決をめぐって『この職種あるいは団体に相談すれば大丈夫だ』と言い切れる存在がない、ということです。少額な事案における訴訟代理や裁判書類作成は、事務所によってかなり露骨に断られます。

これを前提として法律関係者たちの賢い利用法を考えると、紛争の初動で事案が簡単なものなら、まず市役所等の役所が提供する、間違っても依頼の勧誘や組合への加入につながらない種類の無料労働相談で知識を借りることです。大都市の場合、労働問題に限定して弁護士の無料相談を行う公的機関もあるのでそれが利用できればさらによいでしょう。

その後、裁判手続を利用するならば司法書士なり弁護士が個別に実施している法律相談を検討する、あるいは最初から弁護士会の相談センター(労働紛争に関する法律相談の時間枠であること)や日本労働弁護団の電話相談が利用できるなら、そうした相談を経由して労働法に詳しい法律事務所の相談にたどり着くのが、一般的には望ましいといえます。

要件を満たすなら、法テラスが提供する民事法律扶助による無料法律相談を使ってもかまいません。ただし、法テラス経由で民事法律扶助制度による無料法律相談を利用しようとした場合、かならずしも労働紛争に詳しい弁護士が担当するとは限りません。司法書士であれ弁護士であれ、個々の事務所が契約していれば民事法律扶助による法律相談を直接受け付けることができるので、むしろ法テラスを通さずに事務所を探して利用可否を聞いてみるのがいいでしょう。

そうすることができても、無料の法律相談では知識のある担当者に継続して丁寧に面談してもらえることを期待しにくいため、労働関係をある程度扱う弁護士の法律相談なら1時間1万円は正確な知識の値段として妥当ではないかと筆者は考えています。

有料相談をはしごする、というのは時に魅力的です

2年分の残業代や不当解雇のようにある程度請求額が大きくなる労働紛争で法律相談を利用するなら、何件か有料法律相談をおこなって気に入った弁護士に依頼する、というのは大変よいでしょう。気にいらない弁護士を代理人にして後で後悔するより、最初に相談料金として数万円をばらまいてもよいパートナーになってれる先生に会えたなら、それは後々一生にわたるすばらしいことだと思います。

ただし、こうした行動が費用的に引き合うのは給料未払いその他の労働問題のなかでも、請求額が100万円単位の紛争や正社員の不当解雇の話です。

近年増加してきた残業代請求を扱いたい法律事務所では、問い合わせをおこなった労働者に対して『2年分の残業代の請求をできるのか』をまず最初に確認し、そうでないとわかった途端に依頼を断るという問題も発生しています。請求額が少なければ断る、という対応として、これも露骨です。

2年分に達しない、つまり金額が大きくない残業代の請求を相手にしない事務所ならば、少額の給料未払いもきっと相手にしてくれないでしょう。こういうやり方があることを労働者側も知っておくべきです。

もちろんこれらはあくまで一般的な対応や問題であって、当事務所のほかにもある『司法書士と社会保険労務士の兼業、あるいは合同事務所』が望ましい料金と品質で(これこそが一大問題ですが)相談や依頼を受けてくれるなら、少額な給料未払い問題を解決するための費用対効果としてはそれもよいかもしれません。

ところが絶対数としてそんな事務所は多くない、というのが給料未払いの回収をめぐる次の大問題で、たとえば愛知県内では一人の人間が司法書士と社会保険労務士を兼業している、という事務所は、平成16年時点での本県司法書士会の名簿を見る限り10件を超えませんでした。平成29年までに徐々に兼業者の数は増加していますが、それでも司法書士開業者数の1〜2%程度だと思います。

複数の事務所への相談は、それでも必要です相性も重要ですから

結局のところ、うまい具合に役所や公的団体の無料相談がすぐに利用できればそれを利用し(役所の相談であれば、依頼や組合への加入を求められることは当然ありません)、併せてさまざまなウェブサイトを丹念に調べて『依頼を受ける意欲と能力(商売上の意欲と営業能力じゃありませんから念のため)』がありそうな事務所を、有料相談の繰り返しを通じて探し出すのが、給料未払いに遭ったときに取りうる現実的な対応だと思います。

仮にそうやったとしても、少額な給料未払いの場合は有料相談はできても依頼を受けてくれない、という可能性を常に考えておかなければなりません。身も蓋もありませんが、それが実情です。

では給料未払い解決のための各手続と、それを分断して担当している法律関係者たちの実情を見ていきましょう。

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