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給料未払い。でも相手とは話合いができそう。こちらも譲歩するつもり…
民事調停はそんなときの手続きです

民事調停(裁判所での手続き)

申し立てを受け付ける裁判所
お金の支払いを請求する相手(相手方という)の
 住所・法人なら登記簿上の本店・給料支払地としての勤務先を管轄する簡易裁判所
 裁判所ウェブサイトの説明

民事調停とは譲歩を要する手続きですが、強制執行につながります

民事調停は簡易裁判所で行う手続です。民間人の調停委員2名が当事者たちの間で事情を聞いたり、当事者の一方または両方の譲歩を促して紛争を解決するところに特徴があります。

裁判所で行う手続きですので、民事調停できまったお金の支払いが得られなくなったら強制執行できるのが、あっせん申し立てとの最大の違いです。

一方、相手が手続きに協力してくれない場合は調停が成立しないので、相手が話し合いに応じてきそうか、こちらは何か譲歩できそうか、そうした事情を考えて選ぶ必要がある点ではあっせんと共通しています。

必要経費(請求額・裁判所により異なる)

50万円の請求の場合
手数料2500円(この部分が請求額で変わる)
予納郵便切手2920円(名古屋簡裁の例)
相手方が法人なら、その法人の登記事項証明書600円
合計 6020円


申し立てを支援できる法律資格
弁護士・司法書士
当事務所
 司法書士として申立書類作成にあたる。請求額が140万円以下の場合、代理人になることも可
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民事調停と『あっせん』の違い費用がかかるか・強制執行につながるか

民事調停は公的な機関での手続きであるが民間人が関与する、という点で先に述べた『あっせん』と少し似た仕組みをとります。この民間人=調停委員の先生方は事件によっていろいろな職業の人から選任されます。
弁護士や司法書士、社会保険労務士などの法律関係者も多いので、労働紛争を調停にかけた場合も、大都市の裁判所ではこうした人たちが手続に関与してくれることが期待できるというメリットも『あっせん』と同様です。

しかしながら、民事調停は裁判所で行う(そして、あっせん申立よりずっと昔からあった)手続きなので、独自のいろいろなメリットが健在です。あっせん申立と比べた場合の長所と短所を整理してみましょう。

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民事調停が都道府県労働局の『あっせん』より優れている点

簡易裁判所は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーよりも数が多い

簡易裁判所の数は2012年10月現在、全国に438箇所あります。

これに対して厚生労働省が労基署などに設置する総合労働相談コーナーの数は298箇所です。

しかも総合労働相談コーナーは、大都市では比較的近いところに集中配置されている(平成22年時点で東京23区内に17ヶ所、名古屋市内に7ヶ所、大阪市内に9ヶ所など)ため、大都市では総合労働相談コーナーの方が近くても地方では簡易裁判所の方が近いことはありえます。

また、申し立てを受け付ける窓口としての総合労働相談コーナーが近くても、あっせん期日は必ずしもそこで開かれるわけではない(各県労働局がある場所=県庁所在地に行かなければならないことが多い)ため、実際に手続をすすめるためにはさらに遠くへ行く必要がでてきます。

これに対して簡易裁判所では申し立てを受け付ける窓口と、手続としての民事調停を行う場所はほとんどの場合一致しています。簡易裁判所は総合労働相談コーナーと同様に、あるいはそれよりずっと近いのではないでしょうか。

あっせんより扱える手続が幅広い給料未払い他、紛争全般

あっせんで扱えるのは個別労働紛争に限られ、都道府県労働局のあっせんについては未払いの給料を取り立てるような労基法違反の事案では適さないというように、労働紛争のなかでも事案を選ぶ点が短所でした。

しかし民事調停では、労働紛争にかぎらず民事上の紛争は(家族関係を除いて)ほとんど全部扱うことを目的としています。ですから未払い給料や解雇予告手当、不当解雇にともなう和解金など雇い主への金銭の請求なら全て同時に対応できるわけです。

お金の支払いがない場合、強制執行できる調停成立で終わった場合

調停が成立して終了する際に作成される『調停調書』は、そのまま強制執行のための申し立てに使える(債務名義になる)ことになっています。これに対してあっせんの場合は、あっせん合意にもとづく金銭の支払い請求訴訟などを起こして勝訴判決または和解調書(債務名義)を得る必要があります。

調停成立に至らない場合でも、差額を払って通常訴訟へ移行できる

これは相手方に対して『調停を成立させない気なら、今度は訴訟に巻き込むよ』という暗黙の脅しとしての効果があっせんよりずっと高いことを意味します。なお、この「脅し」の効力ですが、当事者のみならず調停委員の先生方も説得の材料として用いてくれることがあるようです。

もっとも、この説得は労働者側にも向いてきます。常に自分に有利に作用するというものではありません。

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民事調停が都道府県労働局の『あっせん』より劣る点

民事調停もいいことずくめではなく、あっせんと比較した際に気になる点もあります。

有料である

とはいえ10万円の支払請求なら手数料と切手代込みで4千円程度、100万円の支払請求でも実費は9千円程度です。申立書作成を司法書士に頼まなければ、この程度でおさまります。

調停委員の人たちが2人がかりで(全面的に味方についてくれるわけではありませんが)交渉の間にはいってくれるなら、安いものだと思いませんか?

調停委員が労働分野の専門家というわけではない

これは、労働紛争以外にもさまざまな紛争を扱わざるを得ない民事調停の限界、労働紛争を解決することだけを視野においている『あっせん』との違いといっていいでしょう。
ただし調停委員の一人に弁護士が含まれることはよくありますし、裁判所が労働紛争で調停委員を選任するにあたってわざわざ法律に疎い人間を選ぶこともないと思います。

あっせんに比べて、事実を探索するための制度的裏付けに欠ける

あっせんについては、あっせん委員が必要と認めたら当事者以外の参考人から意見を聞いたり、行政官庁から資料の提供をもとめたりするというようにあっせん委員に、当事者の意向を離れて独自にいろいろなことを調べる権限が制度上付与されています。必ずしも積極的に活用されているわけではありませんが、制度としてはそうなっています。

これに対して民事調停法上、調停委員にはこうした権限がなく、当事者の申し立てで証人や証拠を持ち込んだり、事案によっては裁判所外での実況見分をさせることができる程度です。

それに、あっせんでもこうした事実認定に常に積極的に踏み込むよりは、どちらかというと事実認定を避けて当事者の譲歩を求めていく態度をとることが多いようです。

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民事調停を裁判所での他の手続とくらべた場合の特徴をみてみます

訴訟より実費が安い

これは支払督促と同様です。手数料も郵便切手も少なくて済むためです。

通常訴訟より速く解決することが期待できる

民事調停は申し立てから3回(約3〜4ヶ月)程度で終結することが多く、あっせんよりやや遅い程度の時間で解決できるようです。ただし労働審判と異なり、制度として3回程度で終わるように作られているわけではありません。

手続が柔軟であり、調停委員の力を借りられるため、本人申立に適する

これは訴訟と比べた際の一つの長所です。証拠や法律的主張が多少貧弱であっても、調停委員の説得で紛争の実情にかなった解決ができる可能性があります。これはあっせんと似ています。

なお、注意すべき点として

  • 最初から譲歩を強いられることがある。なんらか譲歩する気がないと手続が進みにくい
  • 相手方が手続きに協力しないことに対する不利益は、事実上ない

という点があります。民事調停は、もともと一方の当事者の正しさを100%主張したりそれを相手に呑ませたりする手続ではないのです。私も、私自身の労働紛争で調停期日が始まった数分後に調停委員の先生から『いくらまでなら譲れます?』と聞かれて思わず苦笑いした記憶があります。

これは民事調停がそもそも『当事者の互譲によって』解決をめざすために制度を定められたからなので仕方ありません。民事調停法には調停の期日に出頭しない当事者に制裁を加える規定がありますが、これが発動されたと聞いたことは全くありません。

しかしながら、もし相手が手続きに乗ってきた場合は譲歩といっても金額的なものでなく、たとえば遅延利息のカットとか支払の繰り延べ、分割払いなどのように、請求額としてはほとんど払ってもらえて、さしたる譲歩をせずにすむこともあります。
その一方で、当事者の主張を足して2で割るような調停もあると批判された時期もありました。訴訟が維持できるだけの証拠がない場合には、さらに分が悪くなることもあるでしょう。

これらを有利にするために、調停といえども簡潔かつ積極的に証拠を持ち込んで立証に努める、というよりご自分の主張をわかりやすく根拠付けることは重要ですし、訴訟を維持するだけの目算が立たないなら大きく譲って調停委員の先生方の奮闘に賭けるのも作戦です。こうした駆け引きを「訴訟になる前に、訴訟に連続する手続で」できるのは、民事調停の長所かもしれません。

一方で、事実や正当性は無視してとにかく争う気満々の無謀経営者が相手ならば民事調停を選ぶのは無駄、ということはこの手続きを検討するにあたって意識しておかなければなりません。
これは、あっせん申立と共通する民事調停の注意点です。

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