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労働審判は地裁ごとに手続きの進め方に差があります。1期日で終了を『迫られる』ことも?

労働審判(裁判所での手続き)

申し立てを扱う(管轄する)裁判所
相手方会社の本店または事業所の所在地を管轄する、
地方裁判所の本庁および立川・小倉の地裁支部 
 裁判所ウェブサイトの説明

労働審判とは

労働審判は裁判官のほか民間人二名からなる労働審判員が申立人と相手方から事情を聞いて調停による解決を目指し、それができなければ審判という形で判断を示す制度です。弁護士の関与がある申立では、大部分が調停で終結します。

必要な実費(請求額・裁判所で異なる)
例 100万円の請求の場合 手数料 5000円(請求額で変わる) 予納郵便切手3280円(名古屋地裁の例) 相手方が法人であれば、その法人の登記事項証明書600円

合計 約8880円(裁判所で異なる)

申し立てを支援できる法律資格
弁護士代理人として関与する。書類作成での関与もあり得る
司法書士(当事務所)申立書・答弁書などの書類作成を行う。

全三回の期日で結論を出す手続き実質的には1〜2回

これは、常に意識しなければならない労働審判手続の最大の特徴です。
少額訴訟は請求額が60万円までという制限がありますが、労働審判には請求額の制限がありません。しかし地裁ごとに期日の進め方は異なり、名古屋地裁では少し強引に第一回期日での終結を図っている印象を受けます。このことに影響されて、つぎの特徴が出てきます。

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第1回期日に、精力的な準備・相談を要する労働審判手続最大の注意点です

労働審判では手続きの進行が早い以上、自分で申立をする場合であっても、参加する自分自身がそれについていけないとどうしようもありません。
これは代理人をつけず自分で裁判所に出頭する本人申立で労働審判手続を利用する際には、短所になる特徴です。

通常訴訟の第一回期日は数分で終わることもままありますが、労働審判の第1〜2回期日は、それぞれ少なくとも1〜2時間程度が設定されています。
ここで行われるのは、主として

労働審判手続きの期日の流れ

  • 労働者側・使用者側双方の主張の内容の確認および争点の抽出
  • 裁判所からみて必要ならば主張や事実関係の説明をその場で追加させる
  • 出頭している当事者への質問(事実上の当事者尋問)
  • 進行が速ければ裁判所側の心証を開示し、調停開始
  • 調停の段階でさらに、申立人・相手方への個別の事情聴取
  • 可能ならば、調停を成立させて手続き終了

これだけのことを一期日1〜2時間、長ければ3時間以上かけて行います。
司法書士の立場から見ると本人訴訟でおこなう通常訴訟の口頭弁論期日数回分が一気に進行するし、それだけの準備が参加者に求められるという印象を持っています。

とくに第1回の期日で裁判所側の心証形成がなされることから、この期日までに出せる書類=労働審判手続申立書や答弁書を充実させておくことがとても重要になってきます。これは会社側でも労働者側でも同じです。

また、上記の作業は労働審判手続申立書や答弁書をもとにはされますが、司法書士を含む第三者が傍聴できないことが多い審判廷内で、主として裁判官と当事者の口頭のやりとりで進められます。

経験のない事務所への依頼は、おすすめできません

このため、労働審判が司法書士の申し立て書類作成による本人申立に適するかといえば、一般的には(労働紛争にあまり関与した経験がなく、労働審判手続に関与したことがある者と連携してもいない事務所に依頼することが適するかといえば)そうでないと考えます。

司法書士や労働審判の支援を標榜する社会保険労務士の中には、自分を傍聴に参加させようとすることでこれへの対応を図る者もいますが、常に司法書士が傍聴できるわけでもありません。また、名古屋地裁の扱いとしては司法書士に傍聴を許可することはないようです。

それに、労働審判手続で肝心なのは期日当日の傍聴より、期日前までの準備です。
端的には、質・量・方針の面でベストな申し立て書類を出すことです。

したがって、もし自分で申し立てをすることを前提として司法書士に労働審判手続に関する書類作成を依頼しようとする場合、労働審判における上記の特徴及び対処方針をその司法書士がどう考えているのか、これに加えて、その司法書士が労働関係の事案でどれだけの経験があるか、について誠実な説明がない人に依頼することは、絶対にお勧めできません。

また、筆者は労働審判手続申立書の作成の受託に際して、そのお客さまが『きちんと話しができ、話されたことを理解して伝えることができるか』の能力を持っているかどうかにも、注目しています。
司法書士が傍聴できない状態で安易に労働審判を選択すると、第1回期日で自分が裁判所で言われたことが適切に司法書士側に伝えられず、第2回以降でも対応を誤る可能性があるからです。

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裁判所側の判断や心証開示の時期が早い早ければ第一回期日で出ます

これは、使用者側の違法・不当さが明らかな労働紛争について労働者側に有利になりうる特徴です。

なんの根拠もない懲戒処分を撤回させるとか、理由はないが最後の給料を未払いにされた、という場合には労働側にとても有利に作用するといえるでしょう。自分でなんらかの裁判手続きをおこなう場合でも、申立書類がうまく作れるならこれを狙って労働審判手続きを選択する、ということが考えられるかもしれません。

労働審判は必ず労働者に有利だ、とは言ってません

ただし、労働者自身は使用者の処置が不当だと言っているけれど他の人からみたらそうでもない、ということは多々あります。このコンテンツを読む労働者に対して常に有利になる特徴だとは筆者は考えていません。

適切に労働審判手続きを選択したならば、会社側の代理人や社長本人が持ち込む無理な見解や誤った法的な主張に対して、第1回期日で裁判所側から否定的な判断が示され、それをきっかけに一気に労働者側有利な調停になだれ込むことがあり得る、というだけです。

逆に労働者側が下手な本人申立で(あるいは、能力に問題がある代理人や書類作成者に依頼して)無理な主張を持ち込もうとした場合、その期日では回復できない不利な立場に立ち続ける危険性があります。

特に名古屋地裁の扱いについて進行が早すぎる印象があります

上記のことに関連して、特に名古屋地方裁判所における労働審判手続きは、できるだけ第一回期日で終了させるためになんらか無理のある手続きの進行が図られている印象を受けます。当事者から十分事情を聞いていないと感じられたり、根拠が不明な調停案をごり押ししてくる、その際きまって、通常訴訟に移行した場合不利になると言って脅かす事例が見受けられます。

ただし、この強引さや無理な進行が自分に有利に作用することもある(自分が十分な証拠を持っていたり、相手の主張の不当さが明らかな場合はごり押しの方向が相手に向く)ので、名古屋地裁において労働審判手続は本人申し立てに危険を伴うものの、当たれば効果は大きい、そういう性格のものになりつつあると筆者は考えています。

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労働法に関する知識が比較的豊富な集団に担当してもらえる

これは労働審判の純粋な長所です。労働審判の各期日は、裁判官一名と民間人の審判員二名からなる労働審判委員会で進められるため、請求額140万円以下の請求で簡易裁判所に提訴した場合につけられる司法委員とは知識の量・質とも比較にならないほど優越します。

近くの簡裁より遠くの地裁本庁?

この特徴があることから、最寄りの簡易裁判所に本人訴訟を起こしてわけのわからない司法委員や簡易裁判所判事に金額面での譲歩だけ求められ続けるより、あえて遠くの地方裁判所本庁で労働審判を選ぶ、というのは常に魅力的な選択肢になるでしょう。

また、民事調停に際しては調停委員に労働法の知識を持つ人がつけられることがありますが、裁判官並みの説得力はない(特に、会社側代理人が弁護士だった場合に難がある)のが実情です。自分での申し立てでも申立書がちゃんと作れるなら、漫然と民事調停を選ぶよりは労働審判に期待することも考えられます。労働審判には請求額の下限がないため、本人訴訟で簡易裁判所に提訴すべき事案であえて労働審判を選ぶことは常に可能です。

管轄が限定されるそれでも労働審判を選ぶ価値があります

具体的には、労働者側が労働審判手続の申立を行う場合には相手方会社の事業所または本店の所在地を管轄する地方裁判所の本庁と、立川・小倉にある地裁支部しか選べません。これは短所です。

したがって、東京にある会社で働いていたが現在は北海道に転居した、そのあとで残業代未払いをなんとか請求したい、というような場合には労働審判を選ぶこと自体が非現実的です。

また、地方裁判所の支部(小倉・立川を除く)では労働審判を扱わないので、通常訴訟ならば管轄がある最寄りの地裁支部の町と比べて地裁の本庁がひどく離れている場合にも、やはり出頭の難しさから労働審判を選びにくいということになります。東海地方なら、伊豆半島から静岡市、南勢地方から津市、高山市から岐阜市など、同一の県内にあっても地裁本庁までの移動に片道2〜3時間以上かかる町ではこの問題に直面します。

逆にもっと交通の便が悪いところ、たとえば離島に住むお客さまのためにとにかく島外に移動する回数を減らす、という意味で地裁本庁まででてきて労働審判を進める、というご依頼もありました。

この点は、労働者の住所地最寄りの裁判所に提訴できる可能性がある少額訴訟・通常訴訟より労働審判が大きく劣るところです。本人による申立であれ弁護士を訴訟代理人にしての申立であれ、労働審判では第1回期日から当事者本人も自分で裁判所に出頭するよう求められますから、代理人をつけるにしても自分が出頭できるか否かは常に考慮してこの手続きを選択しなければなりません。

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基本的には『調停成立』を目指す

これは長所とも短所ともいえる特徴です。労働審判は基本的には、争点をことごとく明確にし徹底的に争って一円単位で権利義務を決める、というものではありません。むしろ、おおざっぱな心証をえたうえで労働者経営者相互に少しずつ譲歩させて、そのかわり比較的迅速に解決をはかる、という傾向があります。

このため、経営者は最終的には説得されるとしても第3回まで説得のための期日が設定されたり、本来なら全額支払われなければならない給料未払い事案でも労働者が譲歩しなければならない割合が根拠無く増える、ということもあります。
それでも裁判所側で説得にあたるのは裁判官なので、民事調停よりは当事者に対する説得力がはるかに高いと筆者はみています。

また、不当解雇をめぐる紛争でたしかに解雇無効だろう(通常訴訟でも解雇無効で判決が取れるだろう)といえる事案の解決金の水準は、通常訴訟である程度期間をかけて争った場合と労働審判で示される金額とは開きがでてくる、もちろん労働審判で示される金額のほうが低い、という相談や事例もあります。

これは費やす時間と得られるお金の関係をどう評価するか、というものですので一概に労働審判が劣ると言えるものではありません。不当解雇されたあと、ただちに再就職できそうな事案だと労働審判による迅速な金銭解決が適することもありますから、これは適切に手続きを選べばよいということになります。

労働審判を勝手に選ぶ代理人解雇でも残業代でも相談事例あり

これと関連して、不当解雇をめぐる労働問題の解決を依頼した代理人が依頼人に説明せずに通常訴訟ではなく、労働審判を選んでしまったという話しを聞いたことがあります。時間をかけずに金銭解決を目指す、というのは当事者ではなく代理人にも、選択肢として魅力的に見えてしまうのかもしれません。

これから選択すべき手続きがなんなのかについては、依頼に際してしっかりと代理人に話しを聞いておくことで解決できるはずですし、その程度のことが説明できないような人には決して依頼すべきではありません。

また、期日の設定の仕方や当事者に対する態度について、第一回期日で無理矢理終わらせようとする裁判所や全三回分の期日を事前に決めておく裁判所など各地で相当違いがありますので、できるだけ申し立て予定の裁判所の事情を知っている事務所に相談・依頼するのが妥当だと考えます。

自分での申し立てで労働審判手続きの利用を考えている方へ

一部の社会保険労務士のウェブサイトに、労働審判手続の申立を支援するとか、申立書の作成を指導するというものがありますが、労働審判手続申立書を作成したり裁判所に提出する書類の作成について有料で相談を行えるのは弁護士・司法書士のみです。

だから社労士事務所には依頼するな、とは言いません。彼ら自身は適当な正義感を振りかざしたり、無料での指導だから大丈夫などというでしょう。しかし、そこには固有のリスクが発生していることは認識すべきです。

そうした事務所がやっていることに違法の疑いがある以上、いつどんなかたちでその事務所の業務が停まるか、誰にもわからないのですから。

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