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差し押さえる財産・時期について

債権差押命令申し立ては、あくまで債権回収のための一手段に過ぎません。少しでも効果を発揮させるには、どのような財産に対して、どのようなタイミングで手続きを行えばいいのでしょうか。差し押さえる債権ごとに少し考えてみます。

銀行預金

市販の書式集や裁判所ウェブサイトにも載っていて、債権差押命令の対象として一般的な債権の一つです。

ゆうちょ銀行を除いて、相手が持っている預金を差押えたい場合にはその銀行と支店までを知っている必要があります。
銀行預金は、裁判所から銀行に債権差押命令が送達された(正確には、銀行内部の担当者がそれを知って事務処理をした)時点で残っている残高について差押えの効力が発生します。つまり、債務者が引き出すことができなくなります。

差押があっても、債務者がその口座をまったく使えなくなるわけではありません。たとえば4月1日に債権差押命令が第三債務者たる銀行に送達されて、その時点での残高が別段預金に移されたあとは、4月2日に他から入金があっても差押えの効力は及ばないと決まっています。債務者は4月2日付けの入金を引き出したり、他への振り込みに自由に使うことができます。自分でお金を入金しても、もちろんかまいません。

このことから、債権回収のために銀行預金に対する差押えをおこなうにはその口座になるべくお金がありそうなタイミングをよく推測して申し立て時期を決める必要が出てきます。給料振り込み口座に対しては給料日の当日かその直後がよさそうだし、逆に給料日前は残高が少ないから差押えが成功してもとれるお金は少ないということになるでしょう。

入金日の直後ではなく、決済日の直前に注目する考え方もあります。個人が相手ならクレジットカードや家賃の引き落としの日の直前、法人が相手ならその法人が賃金や外注費等を支払う時期の直前には、それぞれ預金口座に残高が準備されていることがあります。

これとはまったく逆の考え方として、残高が少ないタイミングに差押をかけることもあります。
これは、むしろ相手と交渉を再開したい場合に検討します。ある程度債権者が力を持っていることを相手に示したいが、だからといって大きな打撃を与えたくない場合に、残高の少なそうな時期や口座を意図的に選んで差押えをかけることがあります。

零細事業主に対する養育費回収のためにこの手段をとったことがありまして、支払いが滞る→手形を割引している金融機関の口座を選んで差し押さえ申立をかける(金融機関が債務者に事態の説明を求める)→債務者が自発的に入金する、という流れが何回かにわたってパターン化したことがあります。

条件反射じゃあるまいし、と思うのですが、駄目な債務者はいつまでたっても駄目、という一例かもしれません。必ずしも債権差押をへて金融機関からお金を払ってもらうのではなく、債務者から自発的に払わせることができるかもしれない、という例ではあります。

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Last Updated :2013-06-23  Copyright © 2013 Shintaro Suzuki Scrivener of Law. All Rights Reserved.