転付命令申立について

債権差押命令の申し立てと同時に、または債権差押命令が発令されたあとに、転付命令を申し立てることができます。転付命令を申し立てるかどうかは非常に悩ましい問題です。

転付命令とは何かを簡単に言うと、差し押さえた債権を債務者から債権者に譲渡させるのと同じ効果を発生させる命令です。

転付命令のない債権差押命令申立をおこなって差押命令の発令を得た場合でも、差押命令が債務者に送達されてから1週間たてば第三債務者からお金を取り立てることはできます。

しかし、第三債務者がなんとなく支払いをしないでいるうちに他の債権者が同じ第三債務者に差押えをかけてきた場合、差押えが競合することになり、場合によっては差し押さえた債権から十分に支払いをうけられないことがあります。第三債務者から支払いが得られないうちに債務者が破産した場合には、第三債務者から支払いがない=差し押さえの手続きがまだ終わっていないことになりますが、こういう状況下で債務者に破産手続開始決定がでた場合は、強制執行の手続きそのものが停止させられ、結果として差押えが成功したのに支払いが得られない、ということになってしまいます。

転付命令が確定した場合には、差し押さえた債権が債務者から債権者に譲渡されたのと同じ法的効果が発生しますので、あとから債権差押命令申立をかけてくるかもしれない他の債権者との競合は阻止できます。転付命令確定後に債務者が破産しても、すでに債務者から債権の譲渡を受けた(つまり、ゆずり受けた債権はもう債務者自身の財産ではない)わけですから、債務者の破産手続きとは無関係、ということにできます。

そう言われると結構なことばかり、に思えるかもしれません。
転付命令の申し立てにはデメリットもあります。転付命令が確定すると差し押さえに成功した債権が債務者から債権者に譲渡され、同時に債務者に対する債権差押は(債務者に対する関係では、成功したものとして)終了します。

第三債務者に支払い能力がなければ、債権回収が完全に失敗します

それ以後は、債権者は第三債務者からお金を払ってもらうしかありません。ここで第三債務者が支払い能力を失っていたり、極端な場合は倒産した場合には債務者からも第三債務者からもお金の支払いを得ることができなくなります。

つまり、通常は債権者たるあなたが状況をよく知らないであろう第三債務者の財産や企業経営次第で債権回収が致命的なかたちで失敗し、やり直しができない点に大きな不安があるわけです。

転付命令を申し立てなければ、第三債務者になにか問題があっても債権差押命令申し立てを取り下げてほかの第三債務者を選んで再試行できるので、当事務所では通常、転付命令の申し立てをお客さまに推奨していません。債務者の状況がよほど悪く、国税その他の公租公課の滞納処分をしょっちゅう受けていたり、本当に破産寸前であるようなことがなければ、転付命令申立をする意味はないように思います。

ただし、第三債務者の財産状況に問題がなく(つまり、銀行その他まとも会社で)単に内部処理の関係で転付命令を申し立てて確定証明書を提示してほしい、と頼まれることがあります。

この場合には、取立権の存在を説明して転付命令申立をせずに支払ってもらうようお願いすることもありますし、相手がそう言ってるので転付命令申し立てをし、粛々とお金を払ってもらう、という態度をとるのもよいでしょう。

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転付命令申立書

転付命令申立書

平成25年6月10日【1】

名古屋地方裁判所 御中【2】

申立債権者 甲野太郎 印 【3】

電話   052−123−0000【4】
ファクス 052−123−0001【5】

当事者  別紙当事者目録記載のとおり
差押債権 別紙差押債権目録記載のとおり【6】

上記当事者間の御庁平成25年(ル)第1234号債権差押命令申立事件について、差押債権者は、御庁が平成25年6月4日に発した債権差押命令により差し押さえられた別紙差押債権目録記載の債権を、支払に代えて債権者に転付する旨の命令を求める。【7】

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説明

これは、すでに債権差押命令が発令されていて債権者がその事件番号を知っている場合の申立書です。

【1】

転付命令申立書提出の日を記載します。郵送で提出する場合は発送日または裁判所への到着日を記載します。

【2】

先行した債権差押命令申立書を提出した裁判所を記載します。

【3】

債権者の名前を記載し、捺印します。

【4】

電話番号を記載します。

【5】

ファクスがあればその番号を記載します。

【6】

当事者目録と差押債権目録は、債権差押命令申立でつくったものを流用します。複数の第三債務者に債権差押命令が発令されていて、その一部を転付命令の対象にしたい場合は、希望する第三債務者に対する差押債権目録だけをこの申立書に添付します。

この表紙と当事者目録・差押債権目録を順にホチキス留めして割り印またはページ番号を記入し、各ページ欄外に捨て印を捺したものを一通つくってできあがりになります。

このほか、当事者目録と差押債権目録ならびにこれらへの送達に要する郵便切手を、提出する必要があります。郵便切手の金額と組み合わせを裁判所に確認する際に、目録の提出部数も確認しておくようにしましょう。

この申し立てを郵送でおこなう場合の送付書、確定証明書の発行を求める場合の申請書は、判決の確定証明申請書や債権差押命令申立書を郵送提出する場合の送付書とほぼ同じですので、そちらを参照してください。

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Last Updated :2013-06-23  Copyright © 2013 Shintaro Suzuki Scrivener of Law. All Rights Reserved.