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研修・資格取得費等の返還請求

質問

わたしはいまの会社で勤務をはじめて、試用期間が無事に終わったのでフォークリフトの資格を会社の費用で取らせてもらいました。そのかわり5年は働き続けてほしいと言われていたのですが、その後半年経って親の介護のために退職することになりました。

自己都合で退職するなら資格取得の際の講習費を返せと言われて困っています。

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建前 それが労働者の退職を阻止するために行われるなら、違法です

 退職に際して、在職中に受けた研修の費用を支払えと迫られたり、そうでなければ退職を認めないと言われることがあります。もちろん、会社がわざわざ費用をだして労働者に有用な資格や経験を身につけさせたのに、労働者にいきなり辞められたら雇い主も困ってしまいますね。
 ではこれを防ぐために、雇い主が労働者に資格取得や研修受講に際して、何年か在職するよう誓約書をださせたり、そうでなければ違約金(あるいは罰金・損害賠償など)を支払うと合意することは可能でしょうか?
 こうした契約(合意)が有効かどうかは、その合意の内容(負担したり返還するお金の額)やその企業における扱いの実情に照らして検討する必要があり、決め手はありません。労働者にとって、不当な形で退職を妨害したり使用者側が暴利を得たりするような合意であれば無効になる可能性が高くなります。

 労働基準法第16条は、「使用者は、労働契約の不履行について、違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定めています。
労働契約の不履行、つまり退職を含めて「働かないこと」に対して使用者が労働者からお金を取ることが許されないのは、そうした負担を課すことで労働者が意に反して働かされることを防止するためです。会社側がいったん負担した研修費用の返還請求がこれにあたるかは、個々の実情をみて検討することになります。

 美容師やフォークリフトなど、転職しても利用可能な資格であってもその企業で働く際に当然に必要な資格については労働者に費用を負担させたり早期の退職で研修費用の返還を求めさせたりすることはできませんが、その資格をとったり研修を受ける必要が必ずしもないのに、特に労働者が希望して受けさせてもらえた、という場合にはこうした費用を一定条件下で返還することを合意することはできます。また、ある期間勤務したら返還する必要はない、と約束することもできます。この場合でも返さなければならないのは、研修費用等の実費にとどまります。

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本音 零細企業では、いいがかりであることが多いです

  労働者に対して研修費用が発生したと使用者が主張して賃金の支払いを拒んだり、果ては金銭の支払いを請求してきたりすることは、当事務所の労働相談ではごく小規模の企業で働く労働者から相談を受けることがあります。
 こうした場合、実際には使用者は労働者に研修というほどのことをしてはいないのですが、単に労働者の退職後最後の給料の支払いを免れるための言いがかりとして用いられる、あるいは退職そのものを防ぐための足止め(一種の脅迫)としてこうした主張がでてくるという相談内容がほとんどです。

ですから相談の際には実際に研修と言えるほどのことをしているのかどうかをお聞きして、研修にお金を使った実情がなさそうならこの線での使用者側の主張は無視してしまえばよいという助言をしています。単に先輩従業員に面倒をみてもらいながら工場内の機械の操作やルートセールスの道順を覚えた、という程度で研修費用を請求されるいわれはありません。実際に費用が発生していないのに研修費用がかかったと主張して、その支払いを使用者が求めてくるだけであれば、たとえ使用者側に弁護士がついて内容証明でなんらかの金員の支払を求める催告書が送りつけられたとしても特に相手にする必要はありません。

 これに対して、使用者側が労働者に賃金を支払わないことの言い訳として研修費用の存在を口にするようであれば最終的には労働者側からの裁判手続きを視野に入れて督促をかけていくのがよいことになります。こうした主張は、通る・通らないがわりとはっきりしており、なにより研修に費用を投じたことを明らかにする責任は使用者側にあるため、訴訟としては比較的楽なものになるはずです。

 ただし訴訟の引き延ばしは可能ですので、すぐにお金が支払われるというわけではありません。
 また、研修実績がないことが明らかな場合は純粋な賃金不払い事案として、労働基準監督署による指導を期待してもよいでしょう。

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Last Updated :2013-06-20  Copyright © 2013 Shintaro Suzuki Scrivener of Law. All Rights Reserved.