離婚による不動産名義変更(財産分与)の必要書類契約書(公正証書)・調停調書など

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不動産の名義変更に必要な書類


上記のうち、離婚時の不動産名義変更(主に、財産分与による所有権移転登記申請)で注意することを説明していきます。

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登記済証または登記識別情報

登記済証は一般的に、権利証とか権利書とよばれているものです。

財産分与による家の名義変更のまえに、まだ離婚の手続きも別居もしていないならばこれらの重要書類はご自分が住んでいる家のどこかにあるはずです。まず書類が実際にあるのか丹念に探してみることをお勧めします。

離婚寸前の場合は夫婦どちらとも重要な財産・預金通帳などを自分の手元に確保しようと動いていることがあって、すでに相手に重要書類が渡ってしまったということもあるかもしれません。別居の際に相手の預金通帳と印鑑を持ち出して勝手に引き出してしまう、という話しも聞きますが、登記済証や登記識別情報通知については相手のものを黙って持ち出しても有利にはなりません。

『登記済証』『登記識別情報』どちらが必要か

非常にわかりにくいのですが、権利書という名称の文書を役所が発行することはありません。家の名義変更の手続きでは、その家を今の持ち主が取得した登記が済んだ時に発行された書類が必要です。その書類に(たいていは、司法書士が)『登記済権利証』『不動産登記権利情報』などの題名をつけたそれらしい表紙をくっつけています。勝手に着けられた表紙ですからどんなものがついているか、あるいは着いていないかは、譲り受けようとしている不動産によって個別に違うとまず考えてください。
適当なウェブサイトの説明を漫然と信じてはいけません。

財産分与で不動産を譲り渡そうとしている人は、その不動産を購入したり親からの相続などで取得した登記をしています。
結婚後に買ったマンションなら、売買による登記をしているでしょう。
親から相続したり贈与された土地に自分で戸建て住宅を建てたなら、相続や贈与での土地の登記と、建物を建てたときの登記が終わったときにこうした書類が作成されています。

これらの登記がなされたときの『登記済証』か『登記識別情報』を、不動産の持ち主から不動産を譲り受ける登記の申請で提出することとされています。登記識別情報通知を除けば、表紙も様式も違います。

そして、ある不動産を取得して登記が済んだ際に発行された書類が『登記済証』か『登記識別情報』かは、不動産登記の制度とシステムの変更時期が法務局ごとに異なるため、その法務局での変更時期を確認しなければわかりません。この制度改正と変更は、平成17年以降の数年間で全国的に行われています。この時期以降に不動産を相続したり購入した人から不動産の財産分与を受ける場合は、よく確認することが必要です。

受付日と受付番号を見る

権利書というのは一般的な名前であってそんな文書が存在するわけではなく、表紙も様式も一定しない、というのであれば普通の人は登記済証など探せないではないか、と考えるかもしれません。よくわからないから司法書士のところに書類一式持ってきた、という方はたくさんいます。

実際には表紙や題名以外のところに手がかりがあります。元の持ち主が不動産を取得した登記のときに発行された書類が登記済証になり、その登記の受付がされた日付と番号は登記済証にも登記識別情報通知にも記載されているからです。

一方、今の持ち主が不動産を取得した登記の受付の日・受付番号は不動産の登記事項証明書やインターネット経由で閲覧できる不動産登記の情報で確認することができます。これと照らし合わせて確認すればよいことになっています。特に新築の家を取得して不動産登記(住宅の所有権保存登記)を自分でした場合、司法書士がそれらしい表紙を着けることは当然ありません。家に関する重要書類から、登記の受付日と受付番号の記載があるものを探すことになります。

登記済証がないが登記が必要になった…?

 財産分与による登記申請を司法書士に依頼せず、不動産の持ち主が登記済証または登記識別情報を持っていない場合でも、事前通知の制度を利用すれば所有権移転の登記申請そのものはできます。これは、登記申請書の提出後に不動産の元の持ち主宛に法務局から通知が行き、これに回答することで登記の手続きが進むものです。

つまり、もし登記申請書提出後に不動産の元の持ち主が手続きに協力する気をなくしてしまった場合、事前通知への回答をおこなわないことで登記申請が破綻する可能性もあります。

 このため、財産分与による所有権移転の登記を行いたいが不動産の持ち主が登記済証などをなくしている、という場合には、司法書士に依頼して本人確認情報を作成してもらい、一気に登記申請をすすめることも考えてください。

調停や訴訟の結果通りの登記には相手の協力は不要です

家事調停など、家庭裁判所への申立で不動産の財産分与が定められた調停調書や審判書を使って財産分与の登記を行う場合、登記済証や登記識別情報は必要ありません。相手が先に不動産を売り払うような積極的な妨害がない限り、相手からの協力は特に必要なく不動産の名義変更を進めることができます。

当事務所では、調停調書や判決正本記載のとおりの不動産登記が一番安く済むパターンになります。当事者の一方に面談する必要がなく、調停調書などがすでにあるため契約書などを作成する必要もないからです。以下で説明する登記原因証明情報・印鑑証明書も不要です。

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登記原因証明情報になるもの

財産分与契約書は、絶対必要なわけではありません

財産分与の所有権移転登記申請に必要な登記原因証明情報には

  • 不動産を手放す人ともらう人
  • 離婚の日と財産分与の話し合いの成立の日
  • 上記の意思表示により不動産の所有権が移った事実と、その日
  • 名義を変える不動産

これらが書いてあることが必須です。

以上のことが盛り込まれていれば、ご自分で作られた財産分与契約書も登記原因証明情報として利用できることが多いです。財産分与の条項を盛り込んで作られた離婚給付契約公正証書ならたいていの場合、そのまま登記申請に転用可能なかたちで不動産の財産分与の条項が設けられています。

公正証書作成の依頼には当事者双方の印鑑証明書が必要ですから、登記申請のための委任状や印鑑証明書も公正証書の作成のときに準備してもらうと相手に二度手間が発生しません。

財産分与の条項を含む調停調書や審判書は当然に、登記の際の登記原因証明情報として使えます。

あえて公正証書や契約書を作らない場合、以下のようなものでも財産分与による所有権移転登記のための登記原因証明情報として使えます。書式の見本は『登記原因証明情報 財産分与』で検索すれば見つかります。金銭の支払いなどの給付や慰謝料、親権なども盛り込んだ契約書案そのものを探したいときには『離婚協議書』『離婚給付契約書』で検索するのがよいでしょう。

書式と記載したい内容がわかったとしても相手にはその話し合いに応じる義務はありません。話し合いが整わなければ家庭裁判所への調停申し立てを検討することになります。
離婚に際しては不動産の財産分与のほかにも、養育費・婚姻費用の分担・離婚時年金分割など合意するべき事項は多いため、すべて話し合いで合意してから離婚給付契約書を作成するか合意できるところから実際の手続きを行っていくのかの方針は早期に決める必要があります。当事務所では、合意できるところから(相手がその気になった論点から)手続きを進めることが多いです。

不動産登記については、財産分与の合意がととのわない状態で誰か他の人に不動産を売却されれば一巻の終わりである一方、離婚時年金分割については配偶者以外の誰かに勝手に権利を譲り渡されることは絶対ありません。離婚時の住宅の名義変更では、できるだけ迅速に合意を成立させて登記申請に必要な書類を預かることをおすすめします。


    登記原因証明情報
 登記の目的 所有権移転【1】
 登記の原因 平成29年10月1日財産分与【2】
 当事者   権利者(甲) 【3】
       義務者(乙) 【4】

不動産の表示【5】
  所在 名古屋市緑区鳴海町字長田
  地番 ○○番
  地目 宅地
  地積 ○○.○○u

登記の原因となる法律行為
 1.甲と乙とは平成29年9月30日、協議離婚しました。
 2.平成29年10月1日、乙は甲に対し、上記不動産を財産分与する協議が成立しました。【6】
 2.よって本件不動産の所有権は、同日乙から甲に移転しました。

平成29年10月2日 名古屋法務局○○出張所【7】 御中
 上記のとおりまちがいありません。
 義務者 住所・署名・捺印【8】
 権利者 住所・署名・捺印【9】
※A4の紙に、適当に編集して出力してください。


【1】不動産をあげる人(義務者)がこの不動産の持分100%を持っており、それを全部、もらう人(権利者)に移す場合の例。義務者がこの不動産を共有していた場合は、登記の目的は所有権移転とはいわない。
【2】実際に、財産分与の協議が成り立った日を書くこと。日曜日でも当然可。ただし、離婚日より前の日付は不可。
【3】住所と名前を書く。住民票・委任状の記載と一致していること。ワープロ印字可。
【4】住所と名前を書く。協議成立の時点で、この不動産に所有者の住所として登記されている住所と一致しており、かつ印鑑証明書・委任状記載の住所と同じことが望ましいが、必須ではない。ワープロで印字してよい。
【5】権利証に書いてある不動産の表示をそのまま書けばまちがいないことが多いが、事前にこの不動産の全部事項証明書を取って記載を確認すること。区画整理や土地改良・市町村合併があった場合には、全部事項証明書をかならずとってその記載通り書く。
【6】当然ながら、【2】と同じ日付であること。
【7】登記申請を出す法務局を書く。作成した日付は、財産分与の協議成立の日付と同時かそれより後であること。
【8】できるだけ自分で書かせる=自署させるのが望ましい。実印で捺印すること。可能ならば、同じ印鑑で捨印を欄外にもらっておくと、記載が間違っていたとき修正できる
【9】【4】と同じように書く。実印を押す必要はない。

逆に、こうした書類に自分が捨印を押してしまった場合、不動産の表示の書き換えなどで不正な登記をされる可能性がある。自分が捨印を求められた場合、応じないことを推奨する。

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財産分与契約書・離婚協議書を作る場合

財産分与の登記では、登記原因証明情報として財産分与契約書や離婚協議書、これを公正証書にした離婚給付契約公正証書を用いることもできます。

財産分与のほか、慰謝料や年金分割など一部の問題について合意を先送りした結果、離婚の条件に関して最終的に複数の書面ができることになっても法律上は問題ありません。作った複数の書類が相互に矛盾していなければいいのです。

離婚協議書・財産分与契約書といった名称にかかわらず、合意ができれば離婚や財産分与の契約書に載せられることがらには、つぎのようなものがあります。

現金・預貯金や有価証券・動産・不動産・自動車の財産分与

離婚時に分配できる財産として、これらの財産分与はすぐに考えられます。
財産分与として公正証書に記載すると、そのぶん公証人の費用も増えます。
ですので公正証書にはあえて記載せず、別に書類を作っておくことも常に検討します。
合意をしてから分けるのではなく、双方がすでに持ち出したものをリストアップし、それらは財産分与したことにしてお互い異議を述べない、という合意も可能です。

別れる相手にはあげたくないが子供になら家の持分その他の資産を持たせたい(遺産を相続してほしい)という意向もあります。これは財産分与ではなく、財産分与と同時に行う子供への贈与として対応できます。

特に自動車・不動産の財産分与については契約書に合意を盛りこむこと以上に、実際の名義変更の手続きに必要な書類を相手から貰うことが重要です。

長期にわたる保険契約の権利の移転・承継(財産分与)

お客さまがあまり気づいていないことが多いのですが、これは財産です。
具体的には前払いした火災保険、契約者が夫で被保険者が妻である生命保険などです。子ども保険については、そのまま契約を継続してもらってもいいかもしれません。

一般に保険契約は長期の保険期間を定めるほど条件が有利なものが多いため、財産分与として離婚後に契約を引き継ぐことを考えます。

逆に、自動車を譲り受ける場合の自動車保険には注意が必要です。離婚に伴って家族ではなくなる人が保険契約者だった場合、運転者家族限定の特約がついていると事故の際に保険がおりません。自動車保険は離婚後すぐに契約しなおすことをおすすめしますが、上記の特約をなくしたうえで車ごとしばらく借りて乗る、という人もいます。

将来の退職金の分配(財産分与)

財産分与としてありうるのですが、支払時期と金額の設定を厳密にしないと支払いが実現しないことになりかねません。適切な契約書の作成が必須となります。離婚から退職までの期間が離れているほど実現困難といえます。
退職金の支払いを受けたことを相手に報告する義務と、その義務を怠った場合にどうするか、までを定めておく必要があるでしょう。

そうまでしても、退職金をもらった瞬間に使い果たされればどうしようもありません。
理想的には別の不動産その他の資産を担保にとっておくべきですが、難しいと考えます。

住宅ローンの負担

マンションや自動車で、離婚後の売却価格よりローンの残債が多い場合はそもそも財産分与になじまない(オーバーローンの家や所有権留保中の車は、財産とはいえない)のですが、離婚後の残債支払い義務について合意ができれば財産分与の合意のなかに盛り込むこともできます。特に住宅で多いご希望です。

理想的には金融機関と契約し直して(住宅ローンの借り換えをして)財産分与で不動産を貰う人と財産分与後のローンを支払う人を一致させるべきですが、女性側に収入が足りないため借り換えができないことはよくあります。

この場合、相手との契約書で残債支払いの方法・負担がなされなかった場合の処理を定めておくことを強くおすすめします。

支払い方法としてはもともとローンを負担していた相手の預金通帳をあずかって、支払日の都度相手に代わって入金することは合意により可能です。
支払いが途絶えた場合は売却して残金を精算させるか、物件そのものを相手に返却するかも合意によって決められます。

特に不動産の場合、財産分与ではなく売買(分割払いでの購入)というかたちで女性側が男性側にお金を払い、相手がそのお金で残りのローンを返す、という契約形態をとることも考えます。代金を支払いきったときに所有権を移転することにし、その旨の仮登記をする場合、すぐに名義を変える(所有権を移転する)わけではないので金融機関との関係で契約違反の状態を作らずに済みます。
このメリットのほか、女性側がローンを代払いしているうちに財産分与請求ができる期間を過ぎてしまった(離婚から2年過ぎた)場合にも使える手法です。

財産分与という枠組みによらなくても、離婚後の元夫と家の名義変更や住宅ローンの負担について契約することは可能です。ただし、相手との合意はもちろん必要です。

住宅ローンの残債が残った住宅を、金融機関の承諾なく名義変更する(財産分与を登記原因とする所有権移転登記申請を提出し、登記を完了する)ことは不動産登記の制度として可能です。
しかし、登記の制度上可能だというだけで金融機関との関係では、抵当権設定契約には違反します。
当事務所では通常はおすすめせず、完済後に名義変更する方針を提案します。

結婚・住宅取得時に親からもらったお金の精算

財産分与そのものではありませんが、夫の名義で住宅を買う際に、妻の親がお金を出したが住宅は夫だけが所有者になっている場合、財産分与時に問題になります。

この精算を目指す場合、ほんとうは資金に応じた持分を最初から妻の親が持っていたはずだ(当初の登記が間違っていた)、と考える方法と、夫と妻の親のあいだで資金を返還する契約を結ぶ方法、状況によっては贈与を撤回する方法などが考えられます。住宅ローンがある場合に問題が発生したり贈与税が発生するなど、方法として採用できなかったり多額な費用がかかる等の一長一短があり、必ず使える方法が確立されているわけではありません。

相談時の印象として、わりと揉める論点です。これを言い出したとたんに、過去にどんどん遡って双方の親が子供に出したり相続した遺産をつぎ込んだお金まで返せ、という主張の応酬になりやすいからです。

離婚時年金分割

厚生年金について、分割割合を定めておくことができます。
合意を契約書にしなくても離婚時年金分割の手続はできます。

企業年金に加入していたり、国民年金しかない(個人事業主である)場合、その部分は年金分割ができません。この場合は扶養的な財産分与として、年金受給時期から始まる財産分与の分割払い等の条件を設定して対応することができます。

慰謝料の支払い

現金の一括払い・分割払い、不動産その他の物の交付を慰謝料の支払いとして(または、支払いのかわりに)おこなう合意ができます。

慰謝料という語を使わないでほしいという提案が有責側から出る場合、贈与あるいは財産分与という名目で対応することがあります。離婚前後でも、贈与等による登記の申請は可能です。

親権

離婚届提出の時点で決めておかなければなりません。
いったん決めた親権者の変更には家庭裁判所への調停の申立を要するので、離婚までに話し合いを成立させる必要性がここで挙げている他の各項目より強いことになります。

親権のうち、子供のために契約その他の法律行為を代理する権利(財産管理権)と常に子供のそばにいて育てる権利(身上監護権)は話し合いで分離することが可能ですがあまり見ません。子供と同居して育てる(身上監護権を行使する)のは母親、子供名義の預金や不動産を管理する(財産管理権を行使する)のは父親、とすることもできます。

子供との面会

毎年・毎月の回数や場所を定めておくことはできるのですが、離婚後の相手が協力しないことに対して不利益を定める(または、強制的に実現する)ことができません。

養育費

公正証書などの契約書に養育費の支払条件を盛り込んでも、離婚後に支払う人の収入変化(失業など)があれば家庭裁判所への調停申立を経て変更されることがあります。この点に注意が必要です。

支払い方法は毎月一定額の振り込みを定めるのが一般的で、進学・病気などのときには別に一時金の支払いや費用負担を定める条項を設けることができます。

話し合いによって条件を定める場合、支払い終了時期は子供の高校卒業〜大学院卒業まで任意に設定できます。

連帯保証あるいは担保の設定

ここで挙げた『お金の支払い』がされなかった場合に、別の人に払ってもらう(保証してもらう)、または不動産を担保に入れさせる(抵当権を設定する)こともできます。
連帯保証人をつける場合はその人の支払能力や保証人が先に死亡してしまわないか、不動産を担保にとる場合は担保不動産の価値と支払ってほしいお金とが釣り合っているか検討が必要です。

価値や存続期間が釣り合っていれば、自動車や生命保険契約を担保に入れてもらうことも可能です。

保証や担保の設定には、相手との合意と契約書の作成が必須です。

強制執行執行認諾約款付き公正証書

ここで挙げたお金の支払いが期日通りになされなかった場合、ただちに強制執行する(相手の預金や給料を差し押える)ことができます。これを希望する場合のみ、合意の内容を公正証書にしておく必要があります。

でも相手に財産がない場合は機能しないので、注意が必要です。

清算条項

離婚や財産分与の合意を書面にするときに、もう他に請求をしないことを定めておくことができます。争いの拡大や蒸し返しを防ぐ効果があります。
逆に不利な条件と組み合わせて押しつけられるかもしれず、相手から示された場合に慎重な判断を要する条項です。

財産分与と慰謝料はもう請求しないが養育費は別に協議する、など、範囲をさだめて清算条項を設けることもあります。

ペットの養育

個体が識別できれば、その生存期間中に養育のために一定額を支払う、という合意を盛り込むことができます。血統書や予防接種の記録がある犬・猫では可能で、費用支払い義務を定めて離婚給付契約公正証書を作成することもできました。契約としての実現可能性は個体の識別のしやすさに依存しますので、魚や植物では難しいかもしれません。

財産分与した不動産の処分制限・譲受した人の相続対策

財産分与で家を渡すのはいいが離婚後に転売してほしくない・売ったら代金を分配してほしい、というご意向にも対応できます。
財産分与として家やマンションの名義を変えるのではなく、期間や費用を定めて賃借するようにもできます。離婚後の夫婦は他人ですから、賃借人が住み続ける権利は借地借家法で手厚く保護されます。

特に子供がいない夫婦の不動産財産分与では、不動産を譲り受けた人が死亡すると死亡者の親や兄弟が不動産を遺産として相続してしまいます。これを防ぐために遺言を作成して、不動産を譲り受けた人が先に死亡した場合は不動産の元の持ち主に遺贈する(遺言を書いて、相続人でない人に遺産を贈る)などの対策も司法書士として行います。

財産分与によらない財産の移転

離婚時の財産の精算は、必ずしも財産分与として行わなければならないのではありません。

主に税務上の問題が解決できれば、売買なり贈与の契約で財産を譲っても全然構わないのです。
この場合、配偶者でない人(夫の親や、妻の子供など)を当事者に加えることもできますので選択肢の幅が大きく広がります。

財産分与の請求ができる期間が過ぎたまま相手名義の家に住み続けている・マンションのローンを払い続けているなどの問題がある場合にも対応できる可能性を残しますが、いずれにせよ相手との合意は必要です。

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不動産を譲る人の、印鑑証明書

 財産分与の準備の過程で用意した印鑑証明書に記載してある住所と、財産分与で不動産を譲る人がその不動産を取得したときの住所が違う、ということは離婚ではよくあります。離婚に際してはどちらかが家を出ていく(住所が変わる)はずですから。

 この場合には所有権移転登記の前に、その不動産について所有者の住所の記載を変更する登記(所有権登記名義人表示変更登記)をする必要があります。

このほか、所有権移転登記を申請する時点で発行から3ヶ月以内のものでなければいけません。

財産分与の条項がある調停調書や審判書をつかって財産分与の登記を行う場合、印鑑証明書は必要ありません。

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不動産を譲り受ける人の、住民票

 離婚時には、不動産を譲り受ける人の住所について特有の問題が発生することがあります。
 不動産の所有者の住所は、その不動産の登記情報として記録され、誰でも見ることができます。ただし、不動産登記が終わった後に住民票を他の住所に移しても、不動産の登記情報に記録されている所有者の住所は自動的には変わりません。

つまり、離婚後に早々と新しい住所を決めて、その住所で財産分与の協議を成立させたり不動産登記をすれば、その新住所は相手にわかってしまいます。これがイヤだ、ということで離婚後いったん実家に住民票を移し、そこを所有者の住所として財産分与の登記を終えたあとまた転居した人を見たことがあり、これも一つの対処法だと思います。

 こうすると、財産分与を受けた不動産を担保に入れたり譲渡したりする際に、不動産の持ち主の住所として古い住所で登記されているのをその時点での住所に変更する登記が必要になります。この所有権登記名義人表示変更登記の費用は、司法書士に頼んでも不動産一件あたり1〜2万円ですし本人でもできるということを覚えておいて、いつ住民票を移すといいかを決めればよいでしょう。

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名義を変える不動産の、固定資産税の評価証明書

 もし離婚前であれば、不動産の所有者の配偶者で同居している人なら、相手の委任状がなくても評価証明書を取得できます。あらかじめ取得しておくことをおすすめします。

離婚の届け出が出されてしまえば他人ということになりますので、相手の不動産の評価証明書を取得するには委任状が必要です。役所によっては財産分与の登記をすることを定めた離婚協議書や公正証書の提示をすれば評価証明書を出してくれるところもあり、対応が一定していません。

念のため委任状を作るか、財産分与の登記申請の委任状のなかに『後記の不動産について、管轄市区町村役場で固定資産税評価証明書を請求し、これを受領すること』などの文言を追加して評価証明書取得についても委任をうけるような条項を設けておくことをおすすめします。

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財産分与による所有権移転登記の申請書式・ひな形

法務省ウェブサイトで「6.財産分与による所有権移転登記申請書」が入手できます。

登記申請書・財産分与契約書・登記原因証明情報・委任状が含まれています。
土地付き一戸建て住宅の名義変更を想定しているため、マンションの不動産の表示の記載を別に参照する必要があります。

本例の財産分与協議書は、登記申請に耐える最小限の記載があるにすぎません。
これによることはおすすめできず、仮に採用するとしても「本件不動産以外の財産分与は別に協議して定める」といった一項を入れておいたほうがよいと考えます。

マンション(敷地権付き区分建物)の不動産の表示の記載は、「11.登記名義人住所・氏名変更登記申請書」から「(敷地権付き区分建物)の場合」の様式を確認してください。

敷地権化されていないマンションの参考書式は同ウェブサイトにはありません。

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参考文献名古屋市では図書館で調達できるものを紹介しています

この他の参考文献

不動産登記の本人申請に関するもの

財産分与など、離婚に関するもの

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  • 法務局や現地の調査をしたり、ご案内します
  • 公正証書や裁判所に提出する書類も作ります
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