『名義を変える』ということは…?売買による所有権移転登記を自分でするために
目次 『名義を変える』ということは…?
- 土地や家の名義変更の話の前に(登記原因はなんですか?)
- 知っている人から世間相場なみの値段で売ってもらう(売買)
- 他の負担や出費と引き替えの不動産譲渡(売買・負担付贈与・代物弁済)
- タダで譲ってあげる・譲ってもらう(贈与)
- 離婚後の夫婦による、土地建物の名義変更(財産分与)
- 土地建物の持ち主による相続対策(売買・贈与など)
- 知っている(あるいは、知らない)誰かが亡くなった(相続)
- 登記の準備(生きている人から不動産を譲り受ける場合)
知人との不動産売買の相談・名義変更の費用名古屋市緑区の司法書士です
対処事例 贈与税の節減のために
当事務所で扱った例です。数値は架空のものです。
- 売り払うのは、時価570万円程度のマンション
- 売り主と買い主は親類
- 売却価格は100万円を予定
- 売買そのものは、特にいそがない
さてここで『時価』は、不動産業者から査定を取った値である570万円を一応採用しました。売却の理由は単に、自分ではもう住まないから、管理費を払って保有するのももったいないので知っている人にあげる、買い主一家はタダでもらうのも気が引けるから、即金で100万円だけ払いたい、というもの。
つまりどちらかといえば贈与の意思がつよい事案だといえます。ここで買い主を1名とした場合、
時価570万円−売却価格100万円=差額470万円
については、贈与税が課税されると考えられました。贈与税の基礎控除額110万円を引いて計算すると、税額は36万円となります。
つまり、順当に売買すると、買い主は代金として100万円払い、次の年に贈与税として36万円払う、ということになってしまいます。
家族みんなで『共有』しよう?
さて、贈与税の課税を避けるためによくある手として、買い主側で共有名義にすることがあげられます。家族内で争いがない場合には、動員できるだけの人を集めます。
この例では、買い主夫妻と子供さん一人の共有とするようにしてみました。持分は各3分の1です。
こうなると、贈与税が課税される財産上の利益470万円の各3分の1、つまり156万6667円が各3人に移転するに過ぎません。
この場合の一人当たりの贈与税額は4万6000円で、3人分なら13万8000円です。当初の計画どおり1人だけが買い受けた場合にくらべて、22万円強の贈与税の節税になります。売買での所有権移転登記においては、登記申請をする人が増えたから必要経費が増える、ということは一般的にはありません。よって贈与税が発生しそうな不動産取引では、もらい受ける人や買い受ける人の人数を増やす、というのは常に効果的な節税策だといえます。
どうして人数を増やすと総額での贈与税が減るのかについては、贈与税の基礎控除額と累進課税制度にその理由を求めることができます。
簡単にいうと、暦年で、財産をもらい受けるひと1人あたり、110万円までの贈与については贈与税は課税されません。これが贈与税の基礎控除額です。
ですから、上記のように470万円分の権利をもらう場合には、もらう人が1人なら基礎控除額110万円を引いた残り(贈与税が課税される部分=課税価格)は360万円になるのに対し、もらう人が3人なら基礎控除額も3人分、330万円が使えることになります。
次に、もらい受ける権利の額が高いほど、贈与税の税率が上がります。贈与税額の速算表をみると、基礎控除後の課税価格360万円に対しては税率20%、これにたいして、156万6667円ならば10%です。もらえる権利を、もらう人の頭数で割って、一人当たりの権利の価値を少なくすることで、適用される税率を低くする操作もできるわけです。
この2つの作用により、とにかく権利をもらう人の人数さえそろえられれば、贈与税を節税することはそう難しくありません。
たとえばこの例で、もう一人だれか参加させられれば、4人で払う贈与税の総額はたったの3万円で済むはずです。5人ならゼロになるでしょう。
なにも考えずに登記を実行したら、翌年になって36万円取られたかもしれない贈与税ですが、上記の通り、工夫の仕方によってはゼロにすることも不可能ではない事例です。親子・配偶者間での贈与には基礎控除のほか相続時精算課税の適用もありますから、この制度の適用を受けられるように贈与の計画を立てることが必要になってきます。
参考文献
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