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事業主への貸金・出資に関する法律相談これは『労働相談』ではありません

法律相談になることに注意して、相談先を選びましょう

労働者がした事業への出資や事業主への貸金をめぐる紛争では、労基署への労働相談は非推奨です。
これは労働紛争ではありません。

こうした紛争についても、労働者と企業との法的な争いとして法律相談を受けることがときおりあります。労働契約とは別の契約とその内容・実現をめぐる争いになるので、弁護士と司法書士への相談を中心に考えていくことになります。

相談事例当事務所の法律相談から

  • 社長にお金を貸したが返ってこない。会社に貸したのか社長個人に貸したのかわからない。
  • 会社あるいは会社の事業の一部に出資する名目でお金を出したが払い戻してほしい。
  • 一緒にお金を出し合って事業を始めた。名目上、相手が社長だったが争いになって追い出された。
  • 妻と夫で事業を始め、二人とも役員になった。その後離婚したので事業から離れたい。
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持参書類

基本的なもの

  • 出資や貸金についての契約書
  • 渡したお金の領収書や振り込み記録
  • 出資や貸金を勧誘したり頼んできた書類・電子メール
  • 相手の会社の、登記事項証明書または登記情報の写し
  • 相手の会社のウェブサイトの写し(事業概要および、出資の勧誘に関するぺージ)
  • 一部でも配当・返済があったなら、その金額と日付がわかるもの
  • 支払や返済がなされないことについて、相手側からの説明の文書

このほか、他にも同様な被害にあっている人がいないかどうかを調べておくとよいでしょう。
経営者のなかには複数の人達に、半ば詐欺的に出資等の勧誘を繰り返している人がいるためです。同じような事案で多人数と問題を発生させている場合には、ひょっとしたら警察への被害届の提出ができるかもしれません。

逮捕歴・破産歴等を調べるオンライン検索の有効活用を

経営者や役員その他会社関係者にすでに逮捕歴・破産歴がある、という事例もあります。この場合は、労働者への不払いがやむを得ないものではなく意図的な可能性がとても高い、と考えなければなりません。法律相談でこうしたことを調べてくれる事務所はあまりないので、自分で調べることを推奨します。

逮捕歴や破産した経歴の有無は、インターネットで漫然と調べても十分な情報は出てきません。
図書館等で利用できる、新聞記事や官報の全文検索サービスでこの人達の名前(旧姓・変名・他国籍の人については通名含む)を検索しておくことを推奨します。官報の全文検索サービスは、県立図書館クラスの大規模館で利用できます。事前に各図書館のウェブサイト等で確認してください。

帝国データバンク・東京商工リサーチ等が提供する企業情報の検索サービスは、問題になっている経営者や関係者がほかにどのような会社に関係しているかを調査するための有力な手段になります。不動産・金融・保険関係の会社でサービスを契約していることがあるので、知り合いにそうした会社に勤めている人がいるなら利用を頼めないか聞いてみることをおすすめします。当事務所では東京商工リサーチのサービスを契約しています。

この類型の相談では、会社の登記事項証明書を取得してあるなら持参したほうがよいでしょう。事前に取得する場合、特に履歴事項証明書がよいです。
これは代表者の住所を確認するほか、頻繁に会社名や本店所在地を変えていたり、役員に破産歴等があるかの判断に用います。

本当は会社の登記をしていない、ということもあります

登記情報を請求した結果、実際には法人格がない(会社と名乗っているが登記していない)ことが発見される場合もあります。最終的には経営者個人の責任を追求するのですが、計画的である=狙ってやっている不正行為の可能性が高いと考えねばなりません。

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相談機関

  • 地方自治体が行う無料法律相談(初期の相談でのみ推奨)
  • 法テラス・弁護士会
  • 弁護士・司法書士(民事法律扶助その他の無料法律相談を行う事務所)

事業主への出資や貸金をめぐる労働相談は、争いごとの性質が労働紛争ではなく、契約の内容を巡る(民法上の)争いなので弁護士・司法書士への法律相談になじみます。
市役所で一般的に行われる労働紛争とは関係ない市民向け法律相談を利用することは、労働紛争ではこの類型の紛争でのみ推奨できます。労働法の知識は求められないので、民事に関する法律相談ができる担当者なら一応の回答を返してくれます。

返してほしいお金など、争いの内容が140万円以内のお金の請求である場合は司法書士への法律相談も可能です。可能であるというだけで推奨できるわけではありません。相手になる事業主によっては、労働者が出資を引き揚げたために損害が発生した、などの言いがかりをでっちあげて140万円を超える(つまり、司法書士が関与できない)金額の損害賠償請求をかけてくることもあるからです。

ただし、相手にカネがないか事業が上手く行っていないことも多いので、訴訟に勝てても実際の回収が難しいこともあります。法律相談自体にお金をかけることは、あまり推奨できません。

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Last Updated : 2015-04-05  Copyright © 2014 Shintaro Suzuki Scrivener of Law. All Rights Reserved.