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司法書士労働関係の法律相談および裁判書類作成のための相談

社労士と同様、労働紛争では使い方が限られる選択肢です。

扱える分野や依頼が限られる、という点では行政書士に通ずる欠点があります。
労働保険・社会保険の分野で知識にばらつきがある、という点では弁護士に通ずる欠点があります。
行政書士・社労士・司法書士は弁護士ほど知られたブランドではない、という点で抑止力に欠けます。

このため、依頼のまえに個々の事務所の能力の見極めがとても重要になってきます。

司法書士は請求額140万円までの紛争について法律相談に応じることは制度上可能です。個々の事務所が労働紛争を扱っていると確認できるなら、法律相談で利用できます。事務所によっては民事法律扶助の制度が利用でき、この制度による無料法律相談を受けられる可能性があるのは弁護士と並んで司法書士に相談する長所です。

しかし業界全体では労働紛争・労働相談に対する関心が高いとはいえません。各都道府県会レベルでは、労働法や労働紛争に関する研修は年に1回ぐらいしかないことがあります。事務所ごとでの取り組みにも大きなばらつきがあります。労働紛争と言ったとたんに相談すら回避されるような事務所から残業代請求専門と称する商売熱心な事務所までまったく違うと考えなければなりません。

こうした事務所ごとの態度のばらつきの大きさは、行政書士と似た傾向を示すといえます。

筆者が相談者から聞くところでは、労働紛争には無理して関わろうとせずに相談申込みの段階ではっきり断ってくれる司法書士事務所も多々あるので、その点では安心かもしれません。関わり方が消極的であることの裏返しではあるものの、経験が全くない人に有料相談を持ち込んで料金を取られてしまう、ということにはなりにくい面を持っています。

主として裁判所での手続きに関与するのが司法書士の労働紛争への対応ですが、その関与はさらに二通りに分かれます。

  • なるべく依頼人に何かをさせない、代理人的に行動することを目指す事務所
  • 依頼人ができることは自分でやってもらい、書類作成に徹する事務所

後者はとても不便に見えてしまうため、これを強調して労働紛争に取り組むという事務所はあまり見かけません。

前者は、請求額に関わらず「書類作成をすべて代行し、必要な手続き全般のサポートを行う」ことを強調し、依頼しようとする人からみてなるべく弁護士とのあいだに違いを見いだせないような手法で集客を図っているのが注意点です。
司法書士として法律相談や代理が可能な金額面での上限である140万円という数値を、そうした事務所のウェブサイトでは表示していないということもありますので、ウェブサイトをみる際には気をつけておくとよいでしょう。

労働相談に際して、司法書士として自分の資格でできることに制度上の限界がある点を顧客に正しく知らせない、という点には行政書士と共通する暗部があり、決して誠実ではないマーケティング手法です。請求額が140万円を超えやすい長期の残業代請求では、この限界は特に問題になります。
後に述べるとおり、こうした事務所における残業代請求が楽して儲かる定型的業務=平成23年頃まで流行した過払い金返還請求に代わるものと認識されていることにも関係があり、司法書士・弁護士とも、マーケティング手法としては過払い金返還請求の依頼を誘う時ときわめて似通ったものをもっています。

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Last Updated : 2018-08-10  Copyright © 2014 Shintaro Suzuki Scrivener of Law. All Rights Reserved.