相談室からひとこと会社・使用者・債務者側で督促を受けた場合

支払督促に関する補足説明

 支払督促に限らず、裁判所が関与する手続きは多かれ少なかれ『相手が協力しないことへのペナルティ』があるのが利用者にとっての長所です。支払督促では送達を受けてから2週間相手が何も異議を申し立てなければ、債権者は強制執行を経て売掛金なり現金なりを差し押さえることができるわけです。
この意味では、支払督促は申し立てから最も速く強制執行できる可能性を持つ手続です。

 そう言えば債権者(労働者)にはとても魅力的に聞こえますが、ここで『異議』というのはなんの理由もいりません。『異議がある』と一言書いて裁判所にファクスすればよく、最近では裁判所から債務者に送られる定型書類にかんたんなチェックをつけて送るだけ、というのが一般的です。

 こうして督促異議が出た後は、手続きは自動的に通常訴訟(少額訴訟ではない)へ移行され、申し立てた人は訴訟費用の差額(といっても請求額が100万円未満なら、せいぜい数千円)を納めるか取り下げる必要が出てきます。

支払督促を受け取った債務者側は理由にかかわらず異議申し立てができるので、クレジット業者から債務者への申し立てなどでは分割払いの和解をするために異議を申し立てる人も多く、訴訟に移行しても第一回目の口頭弁論期日でいきなり和解、という展開も見受けられます。逆に、事実関係に間違いはないがわけもわからず債務者が出頭してきた、ということで通常訴訟移行後の第一回期日でいきなり判決が出てしまう、ということもあります。これは債務者が対応を誤ったものといえます。

 この、『債務者から異議が出れば通常訴訟になる』というのは双方にとって長所とも短所ともいえますが、申立債権者の側では短所によく注意すべきです。手持ちの証拠をにらんで訴訟の維持が難しそうだと見たなら、支払督促や少額訴訟でなくまず民事調停からはじめるのがよいでしょう。

 支払督促の短所として、和解ねらいまたは時間稼ぎで出てきた督促異議で通常訴訟に移ったとしても、支払督促の申立を行ったひとがいったん訴訟費用の差額を払わなければならず、相手から出された督促異議がどんなくだらない理由によるものであれ(または、督促異議に際して理由がまったくなくても)訴訟になってしまうことは覚悟しておく必要があります。

 ですから労働紛争労働側における支払督促の最大の、というより事実上唯一の長所は、『訴訟を起こす意志を、相手に明確に伝えることができる』という点だけです。迅速に発布されるとか簡単に強制執行できる、という点ではありません。

 これに対して内容証明で『指定期限までにお支払いがない場合は法的措置を取ります』と言っても、受け取った相手に提訴の意思がつたわるかどうかは全く不明です。相手になめられていれば返事ももらえません。

 これに対し支払督促では『返事(異議)がなければ強制執行』ですし、異議があっても『自動的に、裁判開始』になります。自発的にお金を払うのでなければ、これ以外の選択はありません。こちらからの働きかけを無視できなくさせると言う点で、相手に与える脅威度は弁護士が作る内容証明より高いかもしれません。

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支払督促を申し立てられた側での対応

以上の実情から、支払督促を申し立てられた側(債務者側)での対応を考えます。
裁判所から書類が来たからといって、訴えられた!と慌てる必要はありません。むしろこの手続きが弁護士や司法書士の関与なく本人申立でなされた場合、申立をした人にあまり知識がない可能性が高いです。(そうしたダメな人を装って敵を油断させる、という可能性も常に存在はしますが)

支払督促の申立が裁判所備え付けの複写の用紙に手書きでされていたり、申立人が県外に住んでいる(訴訟になっても出頭が難しい)のに申立をしてきた、といった特徴がある場合は、そうした申立人の脅威は低いと考えましょう。

そのうえで、異議を出さないことも一応考えます。これまで述べたとおり、異議を出さないと「債権者は、強制執行ができる」状態は得られるものの、差し押さえる財産を知っていなければ強制執行の申し立てそのものができないためです。
不動産を持たず貯金もなく無職で借金だらけの人に消費者金融業者が送る支払督促がなんの意味も無いのと同じで、債務者側に財産がない(債権者側が調査できない)なら支払督促を放置することも一応可能と言うことができます。

あえて異議を出さない・取り下げる場合裁判外和解とセットです

上記の例は少々非常識なものですが、支払督促の申立に理由があって請求されているお金を払わなければならない場合も「異議を出さない」展開はあり得ます。こちらは申し立てにプロが、つまり弁護士代理人が関わっている場合に積極的に提案します。

具体的には、支払督促申立手続きのほかで債権者(の代理人)と債務者とで交渉して分割払い等の和解をし、「その和解にしたがった支払いがない場合は、支払督促にしたがって強制執行されてもかまわない・和解にしたがって支払っているあいだは支払督促を用いた強制執行をしない」といった内容の合意を別に作る和解契約書に入れておく、というものです。

結局のところ、この「裁判外での和解契約+仮執行宣言付きの支払督促」は督促異議を出したあとの訴訟で成立する和解と同じような内容に仕上がります。約束を破ったら強制執行されるからです。このことが理解できていて仕事が忙しい債権者側代理人、つまり弁護士を相手に提案した場合は、債務者側からの提案でも乗ってくれる方は多いわけです。

債務者側では、督促異義後の通常訴訟で和解するために裁判所にいかなくてよく、異議申立に際して予納郵便切手を納めなくてよいのもメリットになります。

素人向けではないのですが、弁護士を債権者代理人として支払督促が申し立てられ、債務者側に支払い義務がある(訴訟で抵抗しても、債務者側が負けるため和解せざるを得ない)状況では検討してよい対応でしょう。

債権者−債務者間で調整ができれば支払督促の活用も

こうしたことも可能なので、未払い金の問題の解決に向けて債権者・債務者間で合意ができた場合は支払督促を使って強制執行可能な状態を準備することもできます。双方の合意があれば債務承認弁済契約を締結して執行認諾約款付きの公正証書を作ることも当然できますが、これに代えて支払督促の申し立てと「分割払いが続く間は、その支払督促をつかっての強制執行をしない」裁判外和解を併用する提案は債権者側からも行うことがあります。この場合も、債務者側で裁判所や公証役場に行く手間がかからない、というメリットがあります。

上記のような駆け引きができない、または請求そのものが不当だし受けて立たざるを得ない、という場合は督促異議を出し、相手が通常訴訟に移すのを待って迎え撃つことにせざるを得ません。これが一般的な対応ではありますが、訴訟に巻き込まれる手間や費用の節減を考える必要があります。

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労働紛争では、支払督促申立書作成の費用は2万円としました

労働紛争に関する支払督促の申立書類作成では、一律2万円(債権者・債務者各一名の場合)を司法書士による申立書類作成の依頼費用としています。ここまで述べたとおり、支払督促が債権者にとって必ずしも効果を発揮する手続きではないことが理由です。
最低着手金・成功報酬の定めはありませんので、支払督促の申し立てで相手からお金の支払いがあっても成功報酬を請求することはありません。

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