住宅売買・購入司法書士の選定を人任せにすることで、登記費用を数万円損するかもしれません

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なにも考えないと…?業者が決めた司法書士を使うのもいいですが

 住宅購入に当たって金融機関や不動産屋が使う、いつもの司法書士にお任せ。
これはお気楽です。あなたはなんにも考える必要はありません。

 その結果なにが起きるのか、わかりやすい例を見てみましょう。
これから家を建てるために不動産屋さんに仲介してもらって土地を買う。
それを担保に購入資金を銀行から借りる。
よくある所有権移転・抵当権設定登記申請費用の見積もりです。

実施した登記(名古屋市内)

  • 実売価格 約1500万円の土地
  • 購入目的 住宅新築
  • 課税価格 1000万円(評価証明書記載の価格)
  • 抵当権  1200万円(債権額)担保はこの土地のみ
  • 関係者  売り主買い主とも1名

司法書士が行うこと

  • 土地について、売り主から買い主への所有権移転登記
  • 移転した土地への、買い主を債務者とする抵当権設定登記
  • お金を貸す銀行へ行って、決済の場に出席(いわゆる、『立会』)

出てきた登記費用見積り(登録免許税は除く)

  • A金融機関の司法書士 合計10万5千円
  • B金融機関の司法書士 合計8万7千円
  • 当事務所       合計7万5100円

 もちろんやるべきことは、この三人の司法書士で全員おなじ、です。

一部の実費は、根拠不明

 このお話にはつづきがあります。
A金融機関の司法書士の見積書には、『登記事項証明書等(取得代行のこと)』の欄で実費として「7,000円」の記載があります。

 ところが、登記申請前に不動産業者があたらしい登記簿謄本(全部事項証明書)を取っていました。
これを見る限り、争いになる可能性がない事案です。売り主さんは紙の登記済証を持っており、登記識別情報の有効性を確認する必要がありません。このことから登記情報の閲覧や登記事項証明書の取得が必要なのは、

  1. 立会の当日、登記情報の確認 最大500円
  2. 登記終了後、法務局で登記事項証明書取得 最大600円

これだけになるはずです。差額の約6千円がどこに行くのかは、謎です。

さらに続きがあります。上記の費用は『不動産の買い主』に請求する報酬ですが、中部(〜関西)地方の『取引慣習』として、

 売渡証書の作成で、約1万円〜2万円のお金を『売り主側』へも請求する
というものがあります。当事務所でもこの取引で売り主側と買い主側の不動産業者からこれを取るように勧められました。
筆者が司法書士登録に先立って受講した司法書士の平成15年度実施の中部ブロック新人研修における不動産登記参考資料所載の司法書士の領収書例でも計上してありました。言い換えれば、同時期までこの地域では一般的であり、今でも残っている慣習だということでしょうが、私の事務所では請求していません。

『ペラ』で1万円もいいでしょうが…筆者は原則、もらってません

 理由は簡単です。この『ペラ』(←不動産業者はこの話をするとき、売渡証書を指してこう言った)は定型文に不動産の表示を書き込めば完成する程度の代物だからです。
日付と当事者と不動産の表示を書けば完成する既製品も、実際に売っているくらいですから。作業時間としては10分、材料価格は100円に満たないこの『ペラ』で1万円〜の価格設定は、司法書士生活13年を経てなお筆者には理解不能です。

 この両者を算入すると、A金融機関の司法書士と当事務所との報酬差は約1.5倍に開きます。買い主側だけからみても3万円超の差です。

その3万円強が、お客さまが金融機関や不動産屋の言いなりになることの代償です。

 仮に当事務所の報酬が安いだけだと仮定しても(筆者としては、この報酬額で全然不満はないのですが)、A金融機関の司法書士とB金融機関の司法書士の間にも2万円弱の差がでているわけですから、お客さまがちょっと何とかできればこれくらいの費用削減は実現できるかもしれません。

登記費用の見積もりに差が出るのは、司法書士報酬自由化の結果です

 司法書士ごとの登記費用の見積もりに、こんなに差が開いてしまっていることについてはあまり否定的にとらえないでほしいと思います。
かつて業界で統一されていた、不動産登記に関する司法書士の報酬額基準は10年以上前に廃止されました。各司法書士事務所は登記申請の代理についてそれぞれの報酬額を決めており、それでよい、ということになっています。

 

 ですから筆者も、よその事務所が所有権移転登記+抵当権設定登記+決済立会の手続きで10万円超のお金を取ったってそれ自体悪いとは思いません。その金融機関でも、『お客さまが自分で司法書士を選ぶこと』を禁じてはいませんでしたから。

こうした場合の金融機関や不動産業者の理屈としては、『不満があるなら代わりの司法書士を自分で探せばよい』のです。
それさえしないで住宅購入時の司法書士報酬がぼったくりではないか、などとYahoo!知恵袋に質問を寄せたりする人もいて、これには笑ってしまいます。

 ウェブサイト経由で集まる半端な知識の普及と権利意識の高まりは、決して依頼人と司法書士(を含む専門業者全般)にいい関係をもたらしていないと筆者は考えています。
こうしたコンテンツを作ってはいますが、筆者は誰からもどんな登記の依頼でも受けている・受けたい、と考えているわけではありません。

他事務所のほうが安いから安くしろと言われたら、そちらの事務所をおすすめしています。

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考え方を変えましょう!

司法書士は、選べます!
司法書士から、見積をとれます!
司法書士のお客さまは登記をする人で、仕事を割り振る業者ではありません!

 とはいうものの、報酬自由化から十数年超の期間を経てなお、金融機関や不動産屋から降ってくるご依頼だけでやっていける司法書士事務所が多いことは現実として認めざるをえません。
むしろこうした事務所と個人の方から積極的に登記のご依頼を受けようとする事務所の二極分化が進むのだと考えています。

 なお、司法書士法施行規則第22条では司法書士は登記申請を『受任しようとする場合には、あらかじめ、依頼をしようとする者に対し、報酬額の算定の方法その他の報酬の基準を示さなければならない』ことになっています。

依頼意思がないまま登記費用を比べて回りたいだけなら相手にされなくても文句は言えませんが、依頼する事務所をすでに決めた場合には、その司法書士から登記費用の見積をとることは「商取引の常識」ではなくあなたの「だいじな権利」なのです。でも権利って…

 使わないと、なくなってしまうのかもしれません。

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Last Updated : 2016-09-22  Copyright © 2012 Shintaro Suzuki Scrivener of Law. All Rights Reserved.