債務名義ごとの利用可否

債務名義となりそうな文書を持っている人は、それらが現に強制執行に使えるかどうかを確認し、使えないのであれば使えるように準備する必要があります。まず文書ごとに説明します。

公正証書

その公正証書に、相手に対して強制執行できると記載されている条文に基づく権利だけが強制執行できます。離婚に際して作成される離婚給付契約公正証書では、いくつかの条項のうち一部の条項についてだけ強制執行できるとするものがあるので、あらためて内容を確認する、場合によってはその公正証書の内容について、作成を依頼した人に尋ねることが必要です。

当事務所で作ったものではありませんが、養育費の支払いについては強制執行可能にしてある一方、それ以外のお金(慰謝料かもしれません)については強制執行できないような条文のつくりになっている公正証書を見たことがあります。

いっぽうで、元夫婦の双方が別々の理由でそれぞれ相手にお金を支払うことを取り決めておき、一方だけが強制執行可能な条項案をつくったこともあります。

たとえば、元夫は元妻に慰謝料を支払う、元妻は元夫に、住宅の財産分与に基づく所有権移転登記の費用を支払う、というように、離婚に際してお金の流れは必ずしも一方に行くだけだとは限りません。

その公正証書の正本が相手に送られており、相手がこれを受け取っている(債務者に送達されている)ことも確認の必要があります。これらの手続きがなされていれば、公正証書を作成した公証役場に記録が残っているので、『送達証明書』という書類を発行してもらえます。送達証明書も、債権差押命令申し立ての際に必要な添付書類です。

このほか、その公正証書で最初に強制執行の申し立てをおこなうときには、公証役場で公正証書に執行文を付与してもらう必要があります。いちど執行文を付与された公正証書で二度目以降の債権差し押さえ命令申し立てを行う場合は、そのつど執行文を付与してもらう必要はありません。

公正証書は作成したが送達されていない、したがって送達証明書が即時には取得できない、という理由で債権差押命令申し立てをすぐに行えない、という事例はときおり見かけます。この場合は、送達をおこなうことで相手に強制執行の準備をしていることを悟られる可能性があります。送達後わざと数ヶ月おいて(つまり、タイミングをずらして)強制執行に着手することも考えなければなりません。

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仮執行宣言付支払督促

支払督促は、申し立てを経て債務者方に送達された後2週間相手が異議を述べなければ、仮執行宣言をつけてもらうよう申し立てができます。この仮執行宣言がついている支払督促も、債務名義となります。仮執行宣言は、すでに交付された支払督促に『仮に執行することができる』という文言の紙として追加されています。

支払督促や仮執行宣言は制度上相手にそのつど必ず送達されることになっていますので、送達がなされていないことを心配する必要はありません。執行文を付与してもらう必要もありません。送達証明書のみ、支払督促を申し立てた裁判所で取得しておく必要があります。

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和解調書・調停調書

訴訟の途中で、主に裁判所の提案によって、当事者双方で話し合いが行われて合意により訴訟が終わることがあります。これが和解です。和解でお金の支払がきまった場合も、その通りに支払がなされなければ強制執行することができます。和解の内容を記載した文書を和解調書といいます。

訴訟の途中で当事者間に話し合いが持たれるのが和解であるのに対して、最初から話し合いを成立させることを目的とする裁判所への申し立てが調停です。話し合いが成立した場合にはその内容は調停調書に記載され、そこに記載されたお金の支払いがなされなければ強制執行することができます。民事調停・家事調停・労働審判手続の調停による終了いずれも、その結果を記した文書を調停調書と呼んでいます。

通常は和解や調停の成立後に、当事者双方に和解調書または調停調書が送達されます。ですので、その手続きをおこなった裁判所で送達証明書を取得してもらうことになります。

民事調停の結果作成された調停調書、訴訟を経て作成された和解調書には、裁判所で執行文を付与してもらう必要があります。これらの申し立ても郵送でできますので、後でその方法を説明します。

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審判

一般の人がこの手続きを利用するのは、主として家事審判と労働審判だと思います。家事調停が不調になった場合に出される審判でお金の支払義務が定められている、というのを相談でみるのが一般的です。

審判は必ず相手に送達されますので、その手続きをおこなった裁判所で送達証明書を取得してもらうことになります。さらに、執行文を付与してもらう必要があります。

審判は、相手が異議を出せば訴訟で争うことができるため、審判に対する異議がでずに確定したことを明らかにする確定証明書を取得する必要があります。

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判決

判決という標題になっているものと、第●回口頭弁論調書(判決)という標題になっているものがあります。いずれも判決書です。

判決には確定したものとそうでないものがあり、その判決書を見るだけではわかりません。たとえば、第一審で原告勝訴または一部勝訴の判決が出ていて、それに対して控訴された場合にはまだ判決は確定していないことになります。こうした場合でも、第一審の判決に仮執行の宣言がついていれば、控訴審のあいだでも強制執行の申し立てができます。

しかし、もし控訴審で逆転敗訴した場合には強制執行で得たお金を相手に返さなければなりません。

仮執行宣言がついた判決で強制執行する場合は、執行文を付与してもらう必要はありません。送達証明書だけ取得するようにします。
仮執行宣言がついていない判決の場合は、その判決が確定するまで強制執行できません。判決確定後に送達証明書と執行文のほか、判決の確定証明書を取得する必要があります。

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訴訟費用額確定処分

筆者の事務所ではときおり行う手続きです。これは、訴訟で勝訴判決が確定するまでのあいだに使った印紙代や切手代などの実費、書類の作成費用など法律で決まっている訴訟費用について、いくらかかったのかを計算し、判決に示されている原告と被告の負担割合にしたがって相手が支払義務を負う金額を具体的に定める申し立てです。

訴訟費用額確定処分も相手方に送達されるので、送達証明書、さらに執行文と確定証明書を取得する必要があります。訴訟費用額確定処分の確定証明書、と言ったら言葉遊びのようですが、判決に対する確定証明書と訴訟費用額確定処分に対する確定証明書は別個に必要になるものです。送達証明書や執行文も同様に、訴訟費用額確定処分についてまったく別に申立をおこなって取得する必要があります。

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Last Updated :2013-06-23  Copyright © 2013 Shintaro Suzuki Scrivener of Law. All Rights Reserved.