『名義を変える』ということは…?売買による所有権移転登記を自分でするために

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売買のまえに、買い主としてやっておくこと

 不動産を購入するためにお金を出す以上は、売買契約が有効に成立し確実に不動産の引き渡しを受け、必要な登記申請を完了させなければなりません。
 もちろん、それができてもその不動産が目的のために使えなければ意味がありません。

 ここでは、そうした事態を避けるために最低限やっておいたほうがいいことを説明します。売買に限らず、誰かから不動産を譲り受ける際にも取引を適切に終えるにはこの項での説明を参考にするとよいでしょう。

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売り主本人の確認

 売ろうとする不動産の持ち主が、売り主です。不動産を買い受けるときには、当然ながらこのひとご本人と話が進められれば一番よいでしょう。ですが法律上は、本人が選んだ代理人や法律の規定にのっとり売り主を代理できる人を相手にして不動産を売買することもできます。 

 ですが特に、売り主が老齢の場合や『売り主本人でない誰か』が出てきた場合に気をつけておくことがあります。
 常にできるだけ、その本人と会って話をし、その不動産を売る意思を聞いておきましょう。

売り主が老齢の場合

 本人と会えるなら、必ず会って話しをしてみて、受け答えが正常か、その不動産を本当に売る気があるかどうかを聞いてみるべきです。これは必須です。そうしたことがわからない、聞いていない、話ができない、という反応が本人または周りの関係者・家族からでてくる場合には、取引そのものを延期して回復を待つかあきらめたほうがいいと思います。売買契約そのものが有効でないと判断される可能性が残りますから。

 家庭裁判所が選任した成年後見人や補佐人がいて、その登記した旨の証明書を見せてくれた場合には、売り主が認知症でも売買その他の契約が可能ですが、そうした法定代理人が不動産を売却する場合には、むしろ不動産業者への仲介依頼などを通して『できるかぎり相場並に、できれば高い値段で』、つまり売り主の利益を守りながら公正な価格で売却すべきですから、知り合い同士で適当に値段を決める売買は好ましいとは言えません。こうした場合、知人間での売買は値決めがよほど適正にできるのでないかぎり、避けるべきです。

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売り主でない誰かが出てきた場合

 ここでは売り主と、その『誰か』の関係ごとに分けて考えます。

売り主は老人・代理で家族が出てきた

 まず売り主本人に会うことを最優先します。家族など放っておいてご本人のところに直行しましょう。少なくとも売り主本人の現在の状態を確認すべきです。

 つぎにその家族が、家庭裁判所が選任した後見人等の法定代理人であるかを確認します。もしそれらに該当する場合には、選任の審判書や成年後見に関する登記事項証明書を持っているはずです。
 その家族が登記された法定代理人でなく、売り主本人とも会えない場合、取引そのものをおすすめしません。仮に委任状や実印や権利証を持っていたりしても、全然信用できません。親のそうした重要な物を子供が勝手に持ち出す、あるいは委任状を勝手に作成して捺印することは、あり得ることなのです。

売り主は未成年・代理で親がでてきた

 一般的には、未成年の子供の契約を親は法定代理できます。なお、『親と言ってはいるが、正確にはそうでない・あるいは財産管理権がない』場合がありますので、戸籍謄本の提示をもとめることが必要になる時があります。たとえば

  • 実は子供は成年に達しており、親が法定代理人ではない
  • 親子だとは言うが離婚したため、実は片方の親が親権を持っていない
  • 再婚して親と称しているが、再婚相手の連れ子を養子にしていない

こんな場合には、当事者からの相談を漫然と聞いていて後で『えーっ!?』と驚かされることもあります。

子供の年齢なら直接聞けばいいのですが、特に離婚・再婚歴のある親を相手にする場合には、その親が正確な意味で『未成年の子供の親で、子供の財産を管理処分できるひと』であるのかどうか確認の必要があります。親子の関係を正面から聞けるならそれでよし、そうでなければ世間話をよそおって、その親子の関係に関する情報をできるだけ集め、法務局なり司法書士なりの相談に駆け込むことになると思います。

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代理人になったと称する他人が出てきた

 その他人がそういっているだけ、あるいは、実印を押した委任状を持っているだけ、という程度であれば、無視しましょう。本人とコンタクトを取ることを最優先します。まず売り主本人が本当に、その他人に自分の不動産の売却に関して代理させるのかどうかを直接聞いてください。もし本人から本当に、その者に任せている旨聞けたなら、それは必ず書面にさせなければいけません。委任状を取って、実印も押させます。その後はじめてその代理人と話しをすべきです。代理人に任せるという本人の意思が怪しいのであれば、自動的に代理人の能力も怪しい、ということになりますから。

代理人というわけでもない他人が暗躍している

何らか不当な利益を狙う何者か、という存在として行動しているのを、発見できることがあります。

勝手に不動産売買の契約をとりまとめ、売り主か買い主のどちらかからお金をとろう、あるいは、まず自分が買い受けて直ちに売却し差益を稼ごう、というもののようです。

 これまでに一度だけですが、そういった者と売り主本人がたまたま同時期に同じ不動産業者に売却価格の見積もり依頼をかけたために、不動産業者の側から通報を受けたことがあります。

 相手にすべきものではありません。

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土地建物の現地・現物の確認

 こと私人間の不動産売買にかぎらず、たとえば原野商法らしき事案ですと、このもっとも基本的なことすらできずに自滅している買い主が結構目につきます。パッとみて明らかにそれとわかる異常さ、たとえば『道が通じていないが、地目だけは宅地』であることすら発見できずに家が建てられる宅地と信じて山のうえの土地を漫然と取得している、という事案にであったこともあれば、『どうみたってただの崖。木も植えられない』という地目上の山林にたどりついたこともあります。地積測量図では整然と区画された住宅地に見えるが現状は『山』というのも見ました。

 現地調査でこういうのに出会うと、調査員である私も愕然とします。遠慮無く写真に撮って報告し、お客様にも愕然としてもらいます。

 とにかく、買い受ける物件には自分の足で行ってみましょう。自分の目で見てみましょう。住宅なら各設備が壊れていないか片っ端から動かしてみる、土地であれば『掘ってみる(コンクリート屑とか廃油缶とか、時に妙なものがでてくることがあります)』、境界杭があるか、更地なら不法投棄や雑草で人に迷惑をかけていないか、あるいは隣地からそうした迷惑をかけられていないか、登記がない建物は建っていないか、違法に増築されていないか、隣地の住人および周囲の環境はどうかなどなど、現地調査にあたってチェックすべき項目をならべた参考書は図書館に行けばたくさんみつかります。労を惜しまず、自分でやってみましょう。

 お年を召した方から依頼をうけて、こうした調査を行うことがたまにあり、その都度何かに驚かされます。特に山林原野では、現地にたどり着けないことさえあります。

 どうしても、という場合には、現地調査をご依頼ください。

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特に、建物をたてる目的で更地を取得する場合

 現に誰かの家が建っている隣の空き地を買ったとしても、そこに自分も必ず家を建てられる、とは現行法上なっていません。このことに気を付けておく必要があります。

 具体的にはその土地が、都市計画法上の市街化調整区域にあたるなら、まったくその土地に縁もゆかりもない人間が土地を買っていきなり家を建てるのは困難です。不動産業者によってはそうした土地をきれいに区画して『家庭菜園用・キャンプ用』などと銘打って売りに出していますが、いくら住宅街風の区画でも、建物が建たないものは建たないのです。

 こうした建築にかんする制限は、あとは用途指定地域の制約をうける高層建築物(マンション)や、個々の特別な法律の規制にかかるもの(風俗営業など)、計画中の道路用地にかかっている場合についても存在しますから、まず管轄市区町村役場の都市計画あるいは建築担当部署に行って『この建物ここに建てられますか?』と聞いてみることが肝心です。

ただどうしてもなんとかしたい、という人のために抜け道を探すご職業の人もいて、たとえば住宅の場合なら、その土地を相続で得たなどの資格がある=そこに家を建てられる人がいったん家を建ててから、そこに住みたい誰かに転売または賃貸する、最初からそこまで計画して、許可申請を強行する、というのは脱法行為としてはよく聞いた話です。かつては筆者も、そんなインチキ●●書士事務所の丁稚でしたから。

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参考文献

この他の参考文献

不動産登記の本人申請に関するもの

売買など、契約に関するもの

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