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労働紛争で時効の中断を除いて、内容証明郵便を使う意味はあるでしょうか?

内容証明郵便による意思表示(未払い給料の請求・催告など)

内容証明郵便が出せる郵便局
集配郵便局(リンク先の『郵便サービスから選ぶ』→『内容証明』で検索)
インターネット(e−内容証明

内容証明郵便は、ただのお手紙です

賃金未払いをはじめ労働紛争での対応として、まず検討されるのが内容証明郵便での意思表示(残業代の支払いや、解雇撤回を求める通告)です。

他事務所のウェブサイトでは内容証明について、なにか相手を従わせる効力がありそうな説明をしているものがあります。しかし法律的には内容証明も『相手に意思表示をつたえる手段=ただのお手紙』の一つにすぎません。まずこのことに気をつけて、使うか使わないかを考える必要があります。

必要な実費(配達証明を付さない場合)
郵便局窓口に出す場合 最初の1ページで942円 以後1ページ増える毎に260円増し
インターネットを
利用する場合
最初の1ページで1220円 以後1ページ増える毎に358円増し

作成を代行する法律関連資格
行政書士・弁護士・司法書士(代理人として作成することがある)
当事務所(司法書士である代理人として作成することがある)

内容証明のデメリット事実上の効果

内容証明郵便を用いれば、郵便局で

  • 「いつ、誰が、誰に、どんな内容の文書を送ったのか」を証明してもらえて(『内容』証明)
  • それが相手に配達されたことを証明できる(『配達』証明)

ことになります。普通郵便やファクスと比べた場合の、内容証明郵便の特徴はこれだけです。

この特徴があるために、いろいろな法律上の、あるいは事実上の効果が発生するわけです。

具体的には「ある意思表示が相手に伝わったこととその内容が、後で(たとえば裁判で)確実に証明できる」のが内容証明の効果になります。
これが電話やファクスや通常の手紙と比べた際の内容証明の唯一の特徴であり、メリットです。

このため、内容証明は紛争が裁判にもつれ込む前の意思表示(ときには、民法第153条の催告)の手段として使われることが多く、一般的には内容証明の送付そのものが事実上『威嚇または宣戦布告』と受け取られることが多い、つまり、相手との関係を決定的に悪化させてしまう可能性が強いことが内容証明の最大のデメリットです。

内容証明の利用を検討する際には、送った相手と『後に戻れない対立』に向かうことも想定しておきましょう。話し合いが可能な相手や状況で、安易に使っていいものではありません。

内容証明郵便で送った内容を証拠として使えるのは相手も一緒ですから、内容証明で請求した給料未払い額の計算その他の記載が後になって間違っていた、などという場合には容赦なく突っ込まれることになります。ですからなんらか思惑があってわざと行う場合をのぞき、内容証明での請求に間違いは許されません。

内容証明で請求をする前に労働相談をおこなうことで、できるかぎり正確に権利関係をあきらかにしておく必要があると筆者は考えています。それができないなら、確実に必要な主張や事実だけを記載したシンプルな内容で書面を作ることです。

こちらが請求する金額や主張する権利に問題がなくても、表現が不適当(脅迫にあたるとか、紛争と関係ないことを書くとか)な場合、それだけで揚げ足をとられることもあります。

返事もこない・受け取ってもらえる保証もない普通に戻ってきます

また、内容証明は当事者間では『ただのお手紙の一種』なので、内容証明を出しても必ず返事がもらえるわけでも請求したお金を払ってもらえるわけでもない、受け取ってもらえないかもしれない、というのも、有資格者にお金を払って内容証明を作成させた場合のデメリットなのかもしれません。

つまり、確実に効果があらわれるわけではない(未払い賃金などお金の支払いに結びつかないことが多い)手続にかける費用、として行政書士への内容証明作成報酬を見た場合、コストパフォーマンスがよいとは決して言えないのです。内容証明や書留郵便の配達にはいつも意図的に居留守を使い、いったん郵便局へ持ち戻りさせて、必要があれば取りに行く、という個人事業主の話も聞いたことがあります。

内容証明郵便に実費千数百円払っても必ず相手に届くものでさえない、ということは、特に小規模な事業主との労働紛争では意識しておいたほうがいいと思います。給料未払いをはじめとする労働紛争で内容証明を雇い主に送ったらどうなったか、というブログの記事『給料未払い:内容証明の使用で何が起きるか』はもう10年前に書いたものですが、現在でも同様な問題に遭った方の労働相談をお受けしています。

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労働紛争で内容証明を使う必要がある場合(民法第153条の催告とは)

当事務所では労働者側での労働相談を10年ほどおこなっています。
さまざまな事案がありますが、会社や使用者への意思表示に必ず内容証明を使わなければならないと思える局面は一つしかありません。
それが、民法第153条の催告です。条文はつぎのようになっています。

民法第153条

  • 催告は、6箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法若しくは家事審判法による調停の申立て(中略)差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。

これは、長期間にわたる未払い賃金や残業代の請求で特に意識することが多い『時効』の問題に関係しています。実際にありそうな事例で説明すると、

未払い賃金がある場合催告の例

  • 過去3年分の残業代が全く支払われていない名ばかり店長が
  • ある労働相談で、残業代は2年経ったら時効で請求できなくなると聞いた
  • いそいで訴訟を起こす必要があるが、準備の時間がない
  • そこで、民法第153条の規定に従い、未払い残業代を支払うよう、会社に『催告』をしておく
  • この催告から6ヶ月以内に訴訟や労働審判の申立を起こした場合にかぎって、催告が到達した日で時効が中断される

これはどういう意味でしょう?残業代をふくめた未払い賃金の支払いを求める権利は、2年で時効にかかります。
たとえば賃金の支払い日が毎月末日の会社で、平成26年3月28日に労働相談に来て過去の残業代未払いに気づいた場合、平成24年2月末日払いの残業代の請求を訴訟や労働審判で実現することはまず無理です。
相手が時効の主張をすれば、支払い義務を免れることができるためです。

ではどのように対処したらいいでしょう?すぐに訴状をつくって平成26年3月30日に裁判所に提出・受理されたなら、平成24年3月末日支払い以降の残業代については、会社側は時効の主張ができません。裁判上の請求によって、時効の中断があった、ということになります。

とはいえ、上記の例で2日は極端だとしても3月31日までに訴状を作って受理されるようにすることも普通はムリです。

このようなときに、内容証明で賃金の支払いを求める催告をしておくだけならできるかもしれません。これを3月31日までに着くように送っておきます。

この催告の到着から6ヶ月以内に訴訟を起こしたなら、訴訟の提起が平成26年6月でも8月でも平成24年3月末日支払い分以降の残業代について、時効の成立を防ぐことができていることになるわけです。

催告の後で始まった訴訟のなかで、あらかじめおこなった催告が適切な内容で到着したことは労働者側が明らかにしなければなりません。

経営者が訴訟で常に本当のことを言ってくれるわけではない実情を考えれば、催告をした内容と到着日を第三者に、即ち郵便局に証明してもらうのが妥当です。
このためになら内容証明に実費一千数百円出しても役に立つと考えることができるため、筆者も労働相談中に時効にかかる未払い賃金等の請求権が発見できた場合には内容証明郵便の利用をおすすめしています。

そうでなければ、相手への働きかけには特定記録郵便や簡易書留を使う程度にして費用を減らす提案をすることが、当事務所の労働相談では多いのです。

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